大分プロジェクト始動!日田漁業協同組合

2022/03/30

水の街 日田市

大分から高速で約1時間。天瀬高塚インターからさらに30分弱走ったところに日田漁業協同組合の事務所はある。事務所を訪ねると事務の諌山さんが笑顔で出迎えてくれた。

手島組合長はデスクでお電話中。会釈をすると来客用のソファを促してくれた。
お電話をしながら組合長もソファに移動する。

3月11日。午前10時過ぎの事務所は、広い窓からは陽光が差し込み、春の気配がいっぱいだった。

お電話が終わってしばらく組合長は手帳にメモをしていた。真剣な表情だ。
やがて手が止まり、おもむろにこちらを向かれた。
ご挨拶をし、今日の訪問の趣旨を説明している最中で来訪者。

釣り大会の打ち合わせのようだ。
カレンダーを見ながらのやり取りが続いた。
お邪魔にならないようそっとお話を伺う。

時折、笑顔が混じりながらも言葉の端々には、厳しい現実が見え隠れした。
「川の水が少なくて…。もうちょっと雨が降ってくれないと…」
「今週末は雨になりそうですよ」
「玖珠川が災害にあって、あちこちで工事をしている。この20kmの区間に20か所で工事が入っている。解禁日の前後20日ほどは、工事をやめて川を濁らせないように関係各位に通達はしているんだけど」
「ありがとうございます」
「いやいや、うちは釣り大会をやってくれるのが一番いいから」

来訪の方が帰られて、改めて組合長が話しかけてくれた。
「えっと、何だったかな?」
そこから約1時間半のインタビュー。
その間にも組合長の携帯電話が何度も鳴った。

左:手島勝馬組合長 右:事務の諌山さん

ダムに挟まれた川の苦悩

日田漁協には、いくつもの特徴や独自の取り組みがある。
まず特徴的なのは、その地理だ。

組合長曰く、「うちはダムとダムに挟まれている。上流には夜明けダムが福岡県との境にあるし、下流に筑後大堰ダムがある。天然の魚は遡上できない。だから、放流しなければ魚は釣れないんだよ。」

日田名物のひとつに鮎の塩焼きがある。また鮎の放流のニュースは地元の風物詩だ。地域の幼稚園児や小学生たちがちいさな手で鮎の稚魚が入ったバケツを川に放つ様子は、ほほえましく長閑な印象だ。

だが、現実は楽観視ばかりはしていられない。
組合長はその実態を話してくれた。
放流は年に5回。
放流費用はすべてうち(日田漁協)が出している。
年間事業費はおよそ5000万円。
この費用が毎年かかる。
鮎だけでなく、ウナギやエノハ(ヤマメ)も放流する。
稚魚を買ってね。
中間育成をして、放流するんだ。
前は鯉も放流してたんだけどね、鯉ヘルペスが出てからはやめたよ。

夜明けダムは高さが12mとか13mとかある。天然遡上はできない。魚道を創ろうともしたんだけどね。
ダムがない頃は、何百万単位の匹数で上がってきてたんだよ。
今は1万匹くらいでも上がってこれない。
ダムや井堰が壊れて、有明海がきれいになれば遡上するかも。
今、漁業者は減ってる。海苔業者は増えてるんだけどね。

例えば、球磨川のダムを1個壊すとするよね。
そうすると水害で下流域は沈没しちゃう。
今、九州の中でもダムのない川はいくつかしかないんだよ。
ダムを取り壊すと人災が出る。
だから浚渫をして中の泥を取り去ってください、きれいな水に戻してくださいっ
って思う。

今までの歴史とこれから

日本全体で人口が減っている現実。
組合長のお話は続いた。

僕が組合長になったのは、8年前。
きっかけ?
僕はその当時やな場っていう鮎を食べさせるお店を任されてて。
そこが軌道に乗ったタイミングでここの組合に専務として戻ってきたの。
僕の前の組合長は江藤さん。
ところが江藤さんが途中で体調を崩されてしまってね。
専務で戻ってきたときは、まさか組合長をやるなんて思ってなかったよ。
選挙で決まって。
やるしかないなぁって。

十一代目 手島勝馬組合長。ストレスの解消法は、「やっぱり釣りだね!」優しい笑顔が印象的。

今の状態で行けばお金を取り崩すことになる。
なんとかしなくては。
例えば建設業者に放流に関する寄付をお願いしたり、同意書という形をとってね。
今、松原ダムで陸封鮎ができつつあるんだ。
ダム湖を海とみなして、鮎がダムの中で卵を産んで孵化するように。
だから陸封鮎って名前が付いてる。
でも、味も風味も変わらないんだよ。
陸封鮎の研修にも行ったよ。
鹿児島県の鶴田ダムに。
ここは九州で一番大きなダムでね。
陸封鮎が成功すれば、今までみたいに鮎の稚魚を買う負担も減るからね。
ただ、これが難しくて。
ダムの中に稚魚が食べる餌が十分にあるのか、とか。
温度管理とかね。

川の水質調査もやっているよ。
データ取りは、国交省や市や振興局、九電と一緒にね。
年に3回、潜って水質検査をしている。
鮎が食べるコケも調べているよ。
今年で5年目になるね。

昔、ここ日田では大きな鮎が取れたんだ。
30㎝を超えるような。
日本でも誇れるような大きさと美しさの鮎がね。
最近は、26㎝とか27㎝とかだね。

こちらの鮎は全長34.3㎝! 大きさもさることながら、美しい。

川もずいぶん変わってきているんだ。
本来川には、栄養分をたっぷり含まれていた。
今は、体積土に栄養分はあるかもしれないけどヘドロになっちゃってる。

何年経てば以前の川に戻るのか

例えば大雨が降っても、今は石が動かないんだ。
石に鮎が食べるコケができるんだけど、今は泥と混じった藻ができ始めている。
石が動けば新しいコケができたりするんだけどね。
川の水もずいぶん減ったよ。
前はこの時期(3月10日頃)は、菜種梅雨って言って、まとまった雨が降ったんだ。
災害があったりで、あちこちで工事をしている。
工事が完了したとしても、何年経てばその川は本来の川に戻るのか。
一見、川に見えるだろう?
今は、水が流れていれば川ってことになっている。
魚のことまで考えていないんだよね。
水路みたいな川なんだよ。

川ってどこも同じに見えるでしょ。
内水面は、川によって状況が全然違う。
例えば自然に魚が遡上してくるんだったら、お金をたくさんかけなくていい。
でも遡上してこない川は、放流し続けるしかない。
せっかくお金をかけて放流してもカワウに食べられることもあるし、自然災害もあるし。
リスクは大きいよね。

活路を求めて

資金源は、釣り人からの遊漁券と組合員からの賦課金。
前は賦課金の方が圧倒的に多かったけど、高齢化で組合員も減ってね。
20年いや、ここ10年でおよそ半減したよ。
580人くらいいたのが、240人弱だからね。
今では遊漁券の売り上げのほうが逆転しちゃったんだ。
今後を考えると、鮎だけでなく渓流釣りも視野に入れてる。
鮎は一年魚だから、毎年稚魚を買わなきゃいけない。
渓流釣りだと費用負担は軽減するからね。

今回、FISHPASSを導入したのも渓流釣りの事業展開を見越してのこと。
鮎釣りだったら、釣り人や遊漁券の把握・管理はできるけど、渓流釣りとなるとね。
だからこそ、FISHPASSのアプリを入れたんだ。
アプリの実働は今のところ、まだ数件だからね。トラブルの報告もないよ。

日田漁協から歩いて2分の大山川。空やまちの景色が川面に映り込む。この日も釣り師の姿が。

子どもたちへの想い

子どもたちに向けては、子どもたちだけの放流っていうのをやってるよ。
小学校とか幼稚園とか。
年に5回の放流日に近い日にちでね。
あと、家族連れで子どもに釣りを教えてる様子なんかが見れたら、家族まるごと無料にしてる。

これは遊漁券を販売してる釣り具店さんにも周知してる。
子どもさんには、「釣りの楽しさとか知ってもらって大人になったら遊漁券を買ってちょうだいね」、って思いを込めてる。
手島組合長は笑顔でそう言った。

地域の繋がりの中で

取材中に駐在員さんが挨拶に来た。
異動がなかったので来年度もよろしく、とご挨拶回りのようだった。
「そういえば先日の……」
組合長や諌山さんと話し込む。
釣り人の中には、監視員に遊漁券の確認を求められた時、「遊漁券を買っていないのが本当に犯罪かどうか知りたい」と言い出す人もいるらしい。
そんなときは、警察の生活安全課に連絡をすれば説明などしてくれるよう連携が取れている。
川を愛するひとたちの繋がりが見えた。

日田漁業協同組合

大分県日田市 大字高瀬字小シマ1166−3
TEL 0973-22-4021
FAX 0973-24-4051

日田市情報

日田市観光協会
https://www.oidehita.com/

左が日田市観光協会。
駅に直結している。
交番のとなり。
ぱっと目を引く建物だ。

正面にはポスターがいっぱい。
中には、もっとたくさんの情報が。
観光情報は、どうぞこちらで!

裏情報?
日田駅に寄って帰るべし!

なぜなら…。

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