大分プロジェクト#03〜山国川漁業協同組合〜

2022/05/02

山国川漁業協同組合

令和4年3月24日。
桜の開花宣言が聞こえてきそうな春の日。
山国川漁業協同組合の事務所を訪ねた。
時刻は午後2時。
中津駅から車で16分ほど。
長閑なまちの中にその事務所はあった。

車を停めてまず目に飛び込んできたものがある。
あれは…?
掲示板だ!

子どもたちからの感謝の手紙。元気な文字が踊っている。

こちらは先生からのお手紙(写真付!)

中を覗き込むと…。
こどもたちからの手紙だ!
鉛筆の文字とカラフルなイラスト。
ウナギの絵が描いてある。
出だしはどれも『山国川漁業協同組合のみなさまへ』。
ウナギの放流体験がどんなに楽しかったかが、跳ねるような文字で書き綴られている。
担任の先生からのお手紙も。
その一枚一枚が丁寧に掲示され、ガラスケースの中で輝いている。
感謝の手紙と掲示板。
心の繋がりが感じられて、嬉しくなった。

事務所の中に入ると、小さな廊下をはさんで右手に会議室、左手には事務室。

奥にいらっしゃるのが事務の楠木さん。

これは!何てかわいい感謝状♪

新築のスモールオフィスのようだ。
事務員の楠木さんが、『どうぞ、こちらに』と、会議室に案内してくれた。
追いかけるように宮名利組合長が、入っていらっしゃった。
名刺交換を終えて、会議テーブルを向かい合う。

『今日は、何を話せばいいのかな』
穏やかな優しい表情だ。
山国川の特徴についてお尋ねするところからインタビューは始まった。

山国川の今昔物語

う~ん、山国川の特徴ね。
『平成大堰』って知ってる?
あれができたのは、何年前だったかなぁ。
山国川の中津の方で、堰ができた。
目的はいろいろあるけど、たとえば北九州に水を送るために。
それができて、いろんなことが一変しちゃった。
それまでは、あの辺りはアユの産卵場だったんだ。
昔はたくさんアユがいて、放流しなくてもよかった。
シラスやモクズガニも遡上してきてた。
でも、堰ができて魚たちが上がってこれなくなった。
魚道はあるけど、魚は上がって来ないんだ。
だから、放流しなくちゃいけない。
放流するのは、アユ、ウナギ、モクズガニ、スッポン。
アユは年に4~5回放流する。
お金もかかる。
県の公社から稚アユ15~20万尾ほど買って、池である大きさまで育てるんだ。
中間育成って言ってね。
育った後、放流するんだけど、放流のタイミングが大事なんだ。
川の水温がちゃんと上がらないと。
そうだね、18度くらいになったら、放流できるね。
水温が上がらなくて、中間育成の時期が長引けばその分だけ、エサ代もかかる。水道代も、電気代も。
それでも、水温が上がるまでうちは待つんだ。

収入源?
うちも組合費と遊漁券だね。
組合員の数が半分になっちゃってね。
以前は1,200人くらいいたんだけど、今は600人を切ってね。
原因は、組合員の高齢化で川に行けなくなること。
それと若い人たちの川離れだね。

昔ね、我々が子どもの頃は、食べ物と言えば川魚だったんだ。
今みたいにスーパーがあるわけじゃないからね。
釣りをしてそれが夜のごはんになってたよ。
まる1日川にいたような気がするなぁ。
春、夏、秋と川で遊んでいたよね。
でも。
若い世代の親にとって、川は危険なものになっちゃった。

宮名利組合長。たくさん資料をお見せくださいました。

川で遊び、川に学ぶ

僕が思うに…。
今の子どもたちは、1日中ゲームばっかりだよね。
川でなんか遊ばない。
子どもたちが川離れを起こしてるんだ。
親御さんたちも川に行かせようとはしないからね。

昔は、魚釣りを競い合ったり、魚の種類を覚えたり。
どうやったらもっと釣れるだろうって、工夫もしたよね。
川で遊んでて寒くなったら、岩で甲羅干しをしたりね。
もちろん、川が危険なことも身をもって知った。
川でこけたら痛いんだ。
ケガをすることで、痛みが分かる。
友達の痛みも分かる。
川で学んだこと、多かったね。

こんな時代になってしまって…。

少しでも川に親しんでもらおうと、アユのつかみ取りや放流をやってる。
イベント的だけどね。
アユに直に触れて、アユの匂いとか、ぬるぬるしてた!とか、五感で体験してほしくてね。

事務所の前の掲示板?
ああ、あれね(笑)
毎年、樋田小学校の4年生たちにウナギの放流を体験してもらってるんだ。
先生も一緒に来てね。
この先に、寄り付きのいいところがあってね、そこで放流するんだ。
その日は、組合員の放流委員さんも来るからね。

子どもたちが一人1個ずつ、バケツを持って学校から来るんだ。
そのバケツにウナギとかアユとか30尾くらい入れてやるんだよ。
それを川に向かって、バケツをひっくり返して放流。
ウナギに触れない子もいるよ。
でも、子どもたち面白がってね。
『次!次!って』
一人、3回~4回、放流するんだ。
生きてるアユを初めて見るって子もいるよ。
以前はアユを100匹くらい、学校にお届けしたんだけどね。
今は、魚を捌けない親御さんも多いから。

子どもたちの歓声が聞こえてきそう!

カワウとの闘い(漁協を悩ます鳥たちのこと)

カワウ対策はね…。
例えば日田漁協さんとかは、猟友会の方たちが空砲を打って追い払うんだよね。
でもうちは、川に沿って国道が走ってるんだ。
だから空砲は打てない。
銃で威嚇できないんだよね。
どうするかというと、ダム湖にカワウの寝ぐらがあるんだ。
夜、木の枝に作った巣を捕獲するんだよ。
ここにも知恵が要るんだけど。
見つけた巣を全部捕獲はしないんだよ。
なぜだか分かる?
もし、巣を全部捕獲しちゃうとカワウはまた別のところに巣を作るよね。
そうすると、その新しい巣を探して回らなきゃいけない。
だろう?
だからわざと半分くらいだけ捕獲するんだ。
生態系を崩すわけじゃないよ。
でもこんな苦労も分かってもらえない団体もあるんだよね。

アユの匂いはスイカの匂い?!

川の魚は栄養があるんだよ。
コイは、母乳が出るようになるし、ウナギは精が付く。スッポンもそう!
アユはねぇ。
アユはスイカの匂いがするんだよ。
昔、7月とか8月に川に行くとスイカの匂いがしてくるの。そこに鮎がたくさんいるんだよね。
そう!スイカの匂いなの。
今は、ダムができちゃったから匂いもね…。

この間、面白い光景を見たよ。
カワウとシラサギが協働してたんだ。
シラサギが待ってるところまで、カワウが魚を追い込んでた。
まさに、追い込み漁だよ(笑)
頭がいいなぁって思ったね!

魚の気持ちになって考える

僕が組合員になったのは、小学校4年生の時。
たくさん魚を釣ってたから、近所のおじさんから『お前、組合員になれ』って(笑)
その時からずうっと組合員。
組合長になったのは、3年前。
その前は専務を2期、6年やったんだ。
組合長になるなんて子どもの頃は思ってなかったけどね。
組合長になって新しく気づいたこと?
新しくってことはないけど、常々思うのは、川を愛してる人、川をよく知ってる人じゃないと務まらないだろうなってこと。
例えば、平成24年の集中豪雨の時。
記録的な豪雨で洪水になって、被害も大きくて。
それで国交省とかが河川の改修工事をしたんだ。
そしたら、川の形が全然変わってしまったんだ。
土手の堤防を高くして。
そのために川の沿岸にあった樹木も伐採して。
コンクリートで固めてね。
川のかさ上げはまだいい。
川の幅も広げたんだよ。
川幅が広がると川の流れる速度が変わるんだ。
以前より速く流れることになって。
そうすると何が起きるかというと…。

以前は竹林の下とかにちょうどいいくぼみがあって、スッポンがいたりしたんだ。
でも伐採したら、魚たちが隠れる場所がなくなった。
大雨の時、魚の逃げ場もなくなった。
川の流れも速いから、土砂とか堆積も全部海まで流れていく。
海の人たちも、迷惑を被ってると思うよ。
アサリが採れなくなったり、浅瀬のノリの養殖も影響が出たりしてるから。

自然と安心の狭間で思うこと

それとね。
川って一直線じゃないでしょ。
湾曲してるよね。
カーブの場所によっては、水が強くぶつかって削れやすいところや、その逆で流れが緩くて土砂が溜まりやすいところもある。
この流れの不安定も、工夫をすれば平均的に川が流れると思うんだ。
それを国交省の人たちにも話すんだよ。
自分たちで川の流れを調整しましょう、と。なかなか実行にはならないけどね。

コンクリートの堤防ができて…。
確かに人命、財産、景観は守れるようになった。
でも、魚にはいい迷惑だよ。
ここ最近は、雨が降り出したらゲリラ豪雨になりやすいよね。
地球温暖化も進んでいて。
魚は棲みにくいと思うよ。

魚道を魚が上って来れない理由があるんだ。
魚道の位置なんだよ。
今は下流に魚道がある。
その場所を上に作ることで、魚の動線が変わるんだ。
図を描いて行政のひとたちに説明したよ。
組合長は、こういうことを考えて説明・交渉ができないとね。
川を愛して、川のしくみをよく知って、魚の気持ちになれば分かることなんだ。

山国川を見つめながら。川の変容、時代の変化。未来のために守らなければならないもの。川と魚への想いは溢れ続ける。

新しい挑戦 ~FISHPASSアプリの導入~

もちろん、組合のことも考えてる。
現状は、厳しい。
組合員は減ってるし、河川工事による補填金がなくなれば、更にね。
だから漁協自体が、何か独自の取り組みをしなきゃいけない。

例えば。
ウナギって結構みんな取るんだ。
10匹とか20匹とか。
でも、そんなに持って帰れないじゃない?
だからそれを漁協で買い取ってあげる。
『取ったウナギを漁協に持って行ったら、買い取ってくれる』
そんな仕組みを作りたいんだ。
で、漁協は買い取ったウナギを料理店とかに売る。
生きたウナギを捌いて、素焼きまでする。
それを保管する大型冷蔵庫も去年買ってるんだ。

それと!
FISHPASSのアプリもいいんじゃないかと思ってる。
次の理事会で協議するよ。
実は、今課題があって…。
年券の使い回しをする人たちがいてね。
困ってる。
遊漁券は貴重な売り上げだからね。
そこで年券に顔写真を入れようか?とも検討してて。
その為には、5,000円で売ってる年券を少し値上げして写真代を確保しなきゃいけない。
FISHPASSを導入して、アプリを使う人ばかりになったらそこも解消できそうだし!

宮名利組合長は、そう言ってにっこりと笑った。

春に向かう季節。山国川の穏やかな1枚。

山国川漁業協同組合

大分県中津市本耶馬渓町樋田91−5
TEL: 0979-52-2756

中津市情報

中津耶馬渓観光協会

https://nakatsuyaba.com/

中津駅の中に、
中津耶馬渓観光協会があります。

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