大分プロジェクト#04大野川漁業協同組合

2022/06/01

大分プロジェクト#04

大分市中心部から国道10号線を南に下ることおよそ30分。
市の名前が豊後大野市(ぶんごおおのし)に変わるその堺目に大野川漁業協同組合はあった。
4月18日午前10時。
急に気温が上がり初夏を思わせるような日差しの中、大野川漁協を訪ねた。

エントランスに入ると、目の前には非接触型の体温センサーがある。
その横には、手指消毒用のスプレー。
体温を計測していると、事務の上村さんが声をかけてくれた。
促されて事務室に入る。
その瞬間、『何か』に圧倒された。
その時はまだその『何か』が分からなかった。

事務室の奥に組合長室がある。
若松組合長はお電話中。
そのお話が終わるのを待って、改めて上村さんが取り次いでくれた。
若松組合長ににこやかに迎えて頂き、早速本日の趣旨をご説明し、インタビューが始まった。

川の特徴をお尋ねすると、
「だったら…」とおっしゃりながら1枚の資料を見せてくれた。
組合長自らが書かれた記事。
『我が漁協』
サブタイトルは、『母なる大野川を未来に継承する』
若松組合長の想いが綴られている。

こちらが組合長の書かれた記事、『我が漁協』。組合長室の壁にも張り出されている。

私の方をまっすぐに見ながら、
「大野川は基幹延長が107㎞。川の源流は、宮崎県との県境である高千穂北部・祖母傾山(そぼかたむきやま)系ユネスコパーク。支流の数は138本。流域面積、1465k㎡。竹田市・豊後大野市を通り、大分市のど真ん中を流れ別府湾に注ぎ込む。大分県下では一番大きな河川であり、九州でも4番目に大きいんだ。」
ここまでを一気にお話しされた。

この日、インタビューに割いて頂いた時間は1時間。
11時には、来客の予定があると聞いている。

インタビューの間にも、お電話が鳴り、エントランスに訪問者の姿が見えると素早く視線を向けられていた。
ピンと張りつめた緊張感のまま、インタビューが続いた。

今の組合員数はおよそ2,000人。
九州で一番多いよ。
以前はもっと多くて、4,850人だった時もある。
年間予算額は、約5,000万円。
遊漁券が約700万、組合員の賦課金が約600万から700万。
協賛金が約2000万、他には補助金とかね。
主な魚種は、アユやウナギ、アマゴ、モクズガニ、コイなど。
増殖事業にも力を入れて、将来につなげる取り組みをしている。

同時に『水質日本一』も目指している。
アメンボやミズスマシ、ドジョウがいるような川。
自然環境を守らなきゃ。
ここは田舎だろう?
都会の人たちがここに来て、『心が癒される川』を作るんだ。
そのためには、いろんなことを力いっぱいやらなきゃ!

大野川河川環境情報図。川の様子が一目で分かる。

こちらは子どもたちからの感謝の手紙集。

例えば?
例えばアプリとかIT、コンピューター系。
これらも積極的に取り入れながら、漁業運営をしていかなきゃいけない。
FISHPASSのアプリもそれで導入した。
便利で簡単!
ありがたいと思っているよ。

でも。
アプリには、その先を期待しているんだ。
アプリを使って、組合員の賦課金の集金ができないかなって。
うちは、2,000人の組合員がいる。
現状では集金時、一人につき1,000円費用がかかっているんだ。
対面で集金しているんだよ。
各家を訪ねてね。
1度の訪問で集金できないことも多いよ。
留守だったり、持ち合わせがなかったりね。
組合員によっては、賦課金が3万円を超える人もいるからね。

平均1.5回くらいかな。
そのロスもあるし、経費も2,000人×1,000円で、年間200万円かかる。
これをアプリで自動払いができれば!
さらに組合員台帳に自動でデータ管理ができるようになれば。
もちろん、みんながアプリを使えるとは思ってないよ。
80歳を超える組合員の方もいらっしゃるからね。
その方たちの集金方法も、工夫しながらね。
漁協に入金に来てもらうとか。
どこの漁協もいろんな苦労をしているよ。
こういうことがアプリでできるようになると画期的だし、全国的にニーズがあると思うよ。
内水面だけじゃなく、海面漁協もあるわけだから。

組合員の台帳を参考資料として見せて下さった。

うちは事務員さんを二人、正規職員として雇用している。
ITで組合員の管理が自動化できるようになると、今以上にできることがあるからね。
いろいろ改革していくよ。
今から先は、エサを使わない釣りになると思うんだ。
疑似餌や疑似おとりとかね。
いわゆるスポーツフィッシングだね。
昔は、『魚を釣って食べる』が当たり前だった。
でも、今からは変わっていく。

外国から入ってくるブラックバス。
フライフィッシングも取り入れて行く。
もちろん、日本古来種や伝統漁業も守りながらね。
他にも川でボードに乗るSUPとか。
川遊びだね。
親水事業として取り入れていくんだ。

川は海と山を繋ぐ血管

僕の考えは、漁協の仕事は魚を守るだけじゃない。
川ってね、海と山を繋ぐ『血管』なんだ。
この『血管』の管理はとても大変なんだ。
川で油がこぼれたとか、川の水が汚れたとか。
これは、国や県、つまり行政がやるべきことを漁協が代わりにやっている部分も多いんだ。
こういう実情をもっと水産庁や国会にはたらきかけもしていかないと。
全国の漁協が声を上げることが大切。
例えば…。
現在は、全国に800くらい内水面漁協があるでしょ。
仮に内水面漁協が1,000あるとして、各漁協に1,000万円ずつ補助したとしても、100億円しかかからない。
小さい漁協に1,000万あったらずいぶん助かるよ。
100億円って戦闘機1台と同じ値段だからね。
川がだめになったら、海もだめになるんだ。

「いのちきができる川を目指して

今は川漁業では生活ができない。
川の専属漁師では『いのちき(生計・生活)』ができないんだ。
これも変えていきたい。
そのためには、国や県・市、流域住民も巻き込んで、みんなで川を守っていく。
母なる川をみんなで将来につないでいく。
それは地球環境の保全にもなる。
川で過ごす時間を増やす仕掛けをどんどん提供していく。
川辺に人が集う光景をまた創るんだ。
川で遊んで、川を愛して。
そう!
豊後大野市は『川辺でサウナ』を観光資源として売り出しているよね!
いいと思うよ!
まだ、サウナとの事業連携はないけど。
僕はアイデアは何でも賛成!
力いっぱいやったらいい!

新しい挑戦を提案すると反対意見は出てくるよ。
そりゃそうだよ。
そこを納得してもらうのは、結果や数字だね。
つまりは経営力。
そして働く環境改善にも力を入れているよ。
例えば、さっきも言ったけどうちは事務員さんを正規で二人雇用している。
これ、珍しいと思うよ。
二人いるから、ブログの更新もあれだけ丁寧にできる。
他にもコロナ対策として、エントランスに非接触型の体温計を設置したり。
僕自身は完全なボランティア。
ずっと漁師をしてきた。
川にずいぶん稼がせてもらったよ。
だから恩返しだね。
お金はいらない。
お酒を飲むわけでもないし。
朝は5時に起きて体操して犬の散歩に行って。
僕は毎日漁協に来るよ。
仕事が楽しいからね!
漁協は夕方5時までだけど、僕は少し早く帰る。
そしてまた犬の散歩。
用事があるときは、もちろん日曜だって出勤するよ。
僕は21歳で専業漁師になった。
38歳の時に町会議員になって24年間務めた。
その後は、60歳まで市議会議長をやったんだ。
その間も漁はずっとやっていた。
漁は僕の『生業』なんだ。
僕は川を愛している。
僕はこの大野川漁協を日本で『見本』になるような漁協にするんだ。
日本で『一番』じゃないよ。
『見本』だ。
実際に今も全国から研修に来ているよ。
2階に研修室もあるんだ。
見ていくかい?
じゃあ後で案内するよ。
研修に来た人たちが一番驚くのは、僕のやる気・前向きさ・力いっぱいなところだね。
つまり…。
まずはこれをやる!って決めるんだ。
決めたらやり抜くんだ。
途中でいろいろ課題も出てくるよ。
それでも工夫しながら、力いっぱいやるんだ。
成果を出すまでね。

若松成次組合長。川漁はまさに『生業』。半世紀以上を川とともに過ごしてきた。『いちのき』ができる時代を再び。

川の水が減っている。
その理由?
広葉樹が少ないんだ。
針葉樹ばかり。
保水力があるのは、広葉樹。
だから僕は広葉樹のネコヤナギを大野川に植えてるんだ。
今は3000本くらいかな。
100万本を目指してね。
植えるのは基本、僕(笑)
組合員さんが一緒にやってくれることもあるよ。
苗木?
これも僕が自分で育ててる。
だから漁協に経費負担はないんだ。
今、僕は73歳。
100万本に達成しないのは分かってる。
でもいいじゃない?
本当に川に儲けさせてもらったからね。
今は川の未来に向けて楽しみながらやってるよ。
もしかしたら、誰かが継いでくれるかもしれないしね。

僕は大野川漁協を異彩を放つ存在にしたいんだ。
小さくてもキラリと光る。
いろんな振興事業をやるよ。
楽しみながらね!
若松組合長はにっこりと笑った。

その時、エントランスが賑やかになった。
時刻は10時55分。
次の来訪者は団体のようだ。
組合長にお礼を言ってエントランスに向かった。
事務のお二人に、次回来訪の予定を伝えた。
その時に気付いた。
来所時に『圧倒されたもの』。
お二人の机回りだ。
パーテーションに整然と貼られた書類の数々。
動線を考慮された机の配置。
制服姿のお二人。
まさに一般企業の事務所だ。
ここにも若松組合長のこだわりと、大野川漁協の改革を支える体制が見えた。

事務員の樋口さん(奥)と上村さん。縁の下の力持ち。

【漁期】
・アユ:公示日から10月31日
・エノハ(ヤマメ):3月1日から9月30日
・コイ・フナ・ハエ・ワカサギ・スッポン:1月1日から12月31日

【遊漁料金】
ウナギを除く全魚種:年券5,500円日券2,200円
ウナギ:年券5,500円
アユ・エノハ・ウナギを除く全魚種:年券3,300円日券550円 

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大野川漁業協同組合

大分県豊後大野市犬飼町久原686-5
TEL 097-578-0105 FAX 097-578-0131
E-mail o-gyokyo@isis.ocn.ne.jp

豊後大野市情報

豊後大野市は県の南西部に位置しています。

平成の大合併(平成17年)の時に、5つの町と2つの村が、ひとつになって、豊後大野市が誕生しました。
総面積はおよそ600k㎡。
市の西部は阿蘇外輪山のすそ野にあたり、四方を山々に囲まれた盆地です。
その大地を長さ107㎞の大野川が流れます。

7つの地域には、それぞれ魅力的な文化や産業があります。
食べ物、お祭り、観光スポット。
そのどれもが個性的!

そんな豊後大野市が今、力を入れているのがサウナ。
実は…。
豊後大野市は、『おんせん県おおいた』でありながら、温泉が出ないんです。

そこで打ち出したのが、サウナ。
それがかなりユニーク!
『川サウナ』に『鍾乳洞サウナ』?!
大自然の中で、心身を開放する『アウトドアサウナ』が人気を集めています。

豊後大野市名物といえば、市内に5つもある『道の駅』!
『ご当地の美食』が楽しめます。

ぶんご大野 里の旅公社

観光案内所とは思えない愛らしさ。本がいっぱい。

観光情報はこちら

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