出水兵児(いづみへこ)が守る川〜鹿児島県 広瀬川漁協〜

2022/06/29

出水兵児(いずみへこ)とは、鹿児島県出水地方の屈強な青少年を指す言葉で、以下のような謂れがあります。
〜出水兵児は、薩摩藩士の中でも特に粘り強く実直で冷静な強者でした。藩内でも高く評価され、その精神は出水兵児修養掟(いずみへこ しょうようおきて)として現代まで受け継がれており、いまも各方面で活躍する優秀な人材を輩出しています〜

米之津川とともにある、出水平野

米之津川(こめのつがわ)は、鹿児島県北西部に広がる「出水平野」の中心を流れ、平野に豊かな恵みをもたらします。東西南北に広い平野を川が流れていることから、江戸時代に水田地帯が開拓されています。また川を中心に、トレッキングのモデルコースになるような景観が形成されており、山々に囲まれた渓谷と美しい岩肌、多くの野鳥が生息している流域が広がっています。
地政的にも出水は鹿児島県(薩摩)にとって無くてはならない場所です。江戸時代において肥後藩との境にあり、薩摩藩にとって国防の要衝の地となっていました。出水麓(いずみふもと)と呼ばれる藩最大級の防衛拠点が築かれ、藩士が生きた町の面影を今でも残しています。
さらに古くは、平安時代初期に編纂(へんさん)された「続日本書紀」に、遣唐使が漂着した地名としても登場しています。
豊かな自然と恵みを享受する流域、出水兵児の精神、古くからの歴史、それぞれが調和しながら今も人々が暮らす出水は、鹿児島にとって特別な地域といえます。

広瀬川漁協

このような歴史と自然が共生する米之津川を管理しているのは「広瀬川漁協」です。
今回、代表理事を務める鳥里組合長におはなしを伺いました。

漁協設立は昭和26年7月。今年で設立から70年を越え、鹿児島県でもっとも歴史のある内水面漁協となっています。そして、漁協の成り立ちが「アユがとれすぎたから!?」というユニークな理由をお持ちでした(笑)

この地域の伝統的な釣り方は「立て網漁」というのがあるそうです。
網漁という言葉から「すごく取れそう!」と思い、組合長にお聞きすると、
「アユは頭がいいから捕れて2割。大体はスッスッて、逃げられるから笑」とおっしゃっていました。なかなか素人には真似できない伝統釣法だそうです。

漁協のみなさんは漁場整備も担っています。ひとりひとりに持ち場があり、解禁前はもちろん、台風や大雨のあとの掃除や整備に取り組んでいらっしゃるそうです。

さまざまに漁場のこと、漁協のこと、川のことを教えていただきましたが、アユ釣りの話しになると、組合長の顔が一気に若返ります。つられて、わたしも思わず笑顔になっていました。組合長が心がけているのは、川の環境や棲息生物のモニタリングです。モニタリングは、組合員でこまめに実施して、河川環境の把握に努めていると教えていただきました。
そんな漁協の事務所には、米之津川で見つけた魚でいっぱい飾ってありました。その中には、カワウがアユを食べる様子も見ることができます。
近年、カワウの被害は大きいそうです。地元の猟友会と結成した「広瀬川川守隊」で様々な対策を講じてきましたが、「高齢化で解散しちゃったの」と寂しそうな鳥里組合長。
地域はやはり高齢化が課題の一つのようです。

遊漁券情報

遊漁の種類とその期間をお聞きしました。

  • あゆ:6月第一日曜日〜10月31日
  • こい:6月第一日曜日〜11月15日
  • ふな:6月第一日曜日〜11月15日
  • やまめ:6月第一日曜日〜9月30日
  • うなぎ:3月1日〜9月30日
  • もくずがに:9月1日〜11月30日
  • おいかわ:6月第一日曜日〜11月15日
  • てながえび:6月第一日曜日〜11月15日

(※上記期間内で組合が公表する期間に限る。)

販売場所は、平日は広瀬川漁協の事務所を開設しています。
土・日・祝日は、組合長が自ら対応しています。

之津川の誇り

「何と言っても、ココで捕れるアユは凄いんだ!」と嬉しそうに語る鳥里組合長。
「ここのアユは他とは違うね!日本一って言ってもいいよ!」と有名なアユ釣り師に褒めてもらったそうで、満面の笑顔で教えていただきました。
その釣り師さんは「ここの川を守りたいから、あえて川の名前出さない!荒らされたくないもんね」と言ってくれているそうです。

一年という短い生涯のアユなのに、ここのアユは、体長25cmは当たり前、30cmなんて普通だよ、とのこと。アユ釣りやったことがなくても、ぜひ見に行きたくなりますね!

最寄りの公共交通機関からは距離がありますので、クルマ移動をおすすめします。
ちなみにクルマだと以下のような移動時間がかかりますので、時間に余裕を持った計画でお願いします。

  • 熊本空港から1時間45分
  • 鹿児島空港から1時間15分
  • JR博多駅から1時間15分
  • 熊本県球磨川からは1時間

ぜひ九州にいらっしゃったら足をのばして、米之津川と川の恵みを見に来てください!

鳥里組合長というひと

「山と川と海は一体。その中で、川は人でいう血液。だから、止まってもダメだけど早すぎても良くない。もちろん細かい支流もね。毛細血管と同じだから」

(唯一わたれなかった川)
じつは鳥里組合長は、4年前のアユ放流時に転落してしまって、首の骨を4カ所も折るという重傷を負いました。発見された時は、川の中にうつぶせで意識がない状態だったそうです。首から下は動かない状態になり、全治10ヶ月でした。
「川に一日でも早く帰りたい」という強い思いのもと、厳しくつらいリハビリを経て、なんと4ヶ月で退院にこぎ着けました。
組合長は、笑いながらこうおっしゃいました。
「わたり損ねちゃったよ、三途の川を。まだ早いってさ。起きたら美人がいた竜宮城だったんだけど、その後がね。川に戻るまで地獄だったんだ、笑。」
川に対する思いが、人一倍強い方です。
(組合長の心配事)
組合長の心配事は、川の環境がどんどん悪くなっていることです。
「三面舗装によって川に流れ込む雨水は増える。そして川の流れが早くなる。そうすると川に生きる魚も、そのエサの水草にとっても良くないこと。河川工事でコンクリートをつかって覆っちゃうと、もうダメ。ダムの放流とか、山の工事とかで重機を使って木を伐採すると、川が濁っちゃうの。そうすると川の生物はもちろんだけど、海にも影響しちゃう。よく海苔の養殖業から怒られちゃってさ。濁ると海苔漁に影響するから」
だから風力発電とか水力発電とかの調査依頼や協力依頼は全部お断りをしているそうです。
「一つ協力しちゃうと全部OKになるでしょ。中立が大事、人と自然とのね。守らないと、川を」

(出水兵児が守る川)
「鹿児島県は地下水が豊富。だから水道水は、全部地下水なんだ。だから鹿児島では川の水は飲んでないけどさ、(ほかの県は)おっきい川は、川の水が水道水でしょ。どうやって守っているんだろうね。守りきれているのかなぁ」と組合長は課題を口にしました。
「出水は、新しいことをどんどん取り入れる土地柄だったから、ここまで残せているけどさ。変えられないことは、守るという気持ちだけ。あとはどんどん取り入れていくのが大切だよね」とおっしゃいました。

鳥里組合長というひとは、
米之津川に対する熱い思いと、守るために秘める闘志や気迫にみなぎっているということです。「見ることしか出来ないから」と言いながらも、アユの放流場で作業を見守り、アユや川の状態をチェックしている姿は、守り手としての矜持(きょうじ)にあふれていました。

出水に来たら

(おすすめのランチ)
漁協オススメのランチは、出水市役所近くの「あじさい」です。
デザートも充実のはずれ無し、地元ファミレスです。
画像:メニュー・日替わりランチ
画像:デザートランチ

おすすめランチ
日替わりランチ

鳥里組合長と事務の松田さんは、
「やっぱりゆっくり一泊してもらって、居酒屋でアユ料理と芋焼酎を楽しんでもらいたいね」
とおっしゃっていました。

(観光や見どころ)
出水といえばと、というものがたくさんあります。

  • 自然栽培で日本一早い極早生みかん(鳥里組合長も大好き)
  • 玉子の生産額が日本一
    (参照:https://www.izumi-navi.jp/files/Book/0/Book_22_file.pdf
  • 大きさ4m・直径4m・重さ5tを誇る、日本一大きな鈴「大願成就の大鈴」
  • 一刀彫りの日本一大きなお地蔵さん(高さ15m)
  • 日本最大の「鶴」の渡来地。その数は世界一ともいわれて言われています。

日本一のものが結構ありますので、観光だけでも楽しめる地域です。

 (歴史好き、特に戦国・幕末好きは、是非来るべき場所)
関ヶ原の戦い後、泰平の世が訪れた江戸時代に始まった薩摩藩独自の鎖国体制。その中で、肥後藩との国境を担った関所が野間(のま)の関です。その関所越えの厳しさは、幕末の志士たちの間でも有名でした。
出水麓(いずみふもと)には、薩摩藩独自の外城のモデルとなった武家屋敷が広がり、今なお鹿児島を守り続けた出水兵児の精神を感じることが出来ます。
石垣を修復していた方に、漁協について伺ってみたところ、
「(川のことに関して)厳しいよね、広瀬川漁協さん。でも、だからこそ川がさ、きれいなんだよ!」と教えてくれました。
まさに!と思う住民の評価に思わず賛同です。
川に対する愛着が住民にも伝わり、川の守り手としての安心感、存在感の大きさを感じることが出来ました。

フィッシュパスは川を囲んで、釣り人漁協地域社会を結び、豊かさと賑わいを提供します。

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