地域環境再生のうねりを起こす「網掛川」〜鹿児島県 網掛川漁協〜

2022/07/15

研究者が集う、網掛川

鹿児島県加治木町を流れる網掛川(あみかけがわ)は、一つの河川で淡水域と汽水域が完全に分かれている日本で唯一の川です。そのため、鹿児島大学をはじめ九州大学、中央大学、東京大学などの専門家や関係機関が、研究や調査をする河川として、実験や調査などが行なわれています。
その中でも特にユニークな調査結果だったのは「滝を上るうなぎ」です。九州大学とすすめたこの研究は記憶にある方もいるのではないでしょうか。

▶︎記事: https://nazology.net/archives/64333

あの46mの龍門の滝を、ニホンウナギ(シラス)が上ったことを想像してみたら、うなぎの神秘がよりいっそう深まりますね。

研究資料

これだけではなく、網掛川は上流から下流まで様々なプロジェクトや取組みが行なわれています。最近の盛んな取り組みとして、河口での「網掛川干潟再生の会のアサリ・ハマグリ復活活動」があります。

20-30年前までは、河口にたくさんのアサリやハマグリが生息しており、潮干狩りが盛んな地域でした。ところが、8.6豪雨災害による泥の堆積が原因で、生息数が大きく減少してしまいます。この現状を憂いた地元の町おこしグループ「かじっからす会」と「網掛川漁協」、「錦江漁協」が協力して、二枚貝資源の保護・育成・成長のサイクルによる再生活動をはじめました。なかなか生残率が安定せず苦慮していますが、全国に先駆けた干潟再生の取り組みとして脚光を浴びています。活動をつづける現在では、ハマグリの潮干狩り体験は、地域のひとや近隣の子どもたちにとても好評で、干潟再生のため、近隣の小学校によるクリーン活動が、体験学習に組み込まれるほどになっています。市民の関心も高まっており、地域が一丸となって取り組んでいます。

▶︎記事:https://hitoumi.jp/torikumi/doc/jisseki/21_amikakegawa.pdf

網掛川漁協とその活動

今回取材に応じていただいた網掛川漁協さんは、鮎の出荷で大忙しでした。じつは前回取材で訪問した、出水市の広瀬川漁協さんで網掛川漁協の木村組合長とお会いしていました。この取材の後も、すぐに別府川漁協さんへ出荷作業に向かうそうです。
木村組合長に付いていけば、県内の漁協さん全て回ることが出来そうです笑。

木村組合長とぎっちりのスケジュール
米之津川でお会いした際の木村組合長

「そもそも網掛川は、昔から稚アユを穫って出荷するのが主な活動。
鹿児島県にはアユの中間育成が無いのよ、むかし県も試してみたけど、失敗しちゃって。なんせ錦江湾は、【アユの宝庫】だから必要なかったみたい。
いまアユ資源に対する取り組みを要請していてね。鹿児島県以外で行なっている中間育成を、県内でも実施できるよう要請をしているけど。今年は豊漁でねえ。計画すすまないかも笑」
と木村組合長はエピソードを交えて語ってくださいました。

育成施設がないということは安定的な出荷数が読めないため、その年の漁獲量によって漁協の作業量が左右されることになります。以前は漁獲量が「1tぐらい」あったそうですが、昨年は200-300キロ程度まで落ちていたそうです。
「ただ、今年はすごい!売っても余るぐらい笑」と、昨年とは違う手応えで大忙しな様子でした。

網掛川

〈遊漁券情報〉

遊漁期間

遊漁券

そのほかの漁協の取り組みについてもお聞きしました。
「毎年7月から9月に、この上にある竹山ダムで、外来種の駆除をしているよ。ブラックバスとブルーギルを、みなで釣りに行くんだよ。バス釣りは人気だけど、リリースしちゃうから、(駆除が)全く追いつかなくってさ」
外来魚の繁殖は、内水面漁協が活躍しないと中々減らせません。みなさん、外来魚を釣ってしまった際は、リリースしないようお願いします。

地域交流イベントも企画中だそうです。「夏はまちづくり協議会での体験学習、秋には「網掛川プロジェクト5」(←まだ内容は教えられない)を予定しているよ。いろいろあるから、また来てみてよ!」とお誘いいただきました。

木村組合長というひと

ひとことで木村組合長を表現すると「アグレッシブ」です。
もともと鯉の養殖業(※)を営んでいて、生まれの熊本から鹿児島へ、仕事でいらしたそうです。その際、組合員になられて、平成17年より組合長に就任しました。

※じつは鹿児島は鯉が人気!鹿児島の夏の風物詩である「そうめん流し」は、県民であれば3点セットを付けて注文します。その3点セットというのが、鯉コク・鯉のあらい・ニジマスの塩焼きになります。そうめん流しは人気のメニューで、その影響で鯉の消費量が多いのです。

「網掛川は、釣りがなかなか出来ないから、川に関わる活動はどんどん広げてきているんだ。収入源には少ないけど」と苦笑いしながら、以下のような活動に取り組んでいることをおしえていただきました。

  • 田中井堰での、石倉かごの設置という、いわば「うなぎの住処作り」
  • 日建工学株式会社と共同で、アルギニンをコンクリートに注入しての水中実験
  • 内水面漁協では唯一である下流域河口域(干潟)でのハマグリの試験養殖(1.研究者が集う、網掛川 参照)

お話をお伺いすると、え!と驚くような壮大なプロジェクトばかりで驚きの連続です。
「いま言ったのはね、組合活性化の一環なんだよ。研究のために、川を提供しているんだ。しっかり使ってもらうことだよね」と狙いについて教えてくれました。

さらに、うなぎの研究にも興味があるそうで、「鹿児島県うなぎ資源増殖対策協議会」に参加して、勉強会含めて日々造詣を深めています。

カワウのお話もお伺いしました。
「組合としてはカワウの対策もあるけど、住宅街だから対策が難しいんだ。対策をしても鹿児島県の買い上げ(助成金)がないから、カワウ被害が数として把握できないし、(出そうと思っても)出てこないでしょ。カワウ対策の協議会を立ち上げるように進めているけど、県の許可も居るしねえ。やるなら九州とか全域でやらないと意味ないでしょ。カワウの行動範囲って滋賀県でタグを付けたのが、宮崎県で発見されているぐらいだからね」と、問題や課題を洗いだししているご様子でした。
干潟の再生も、最初は町おこし行事への参加からで、まわりまわって、内水面漁協初のハマグリ試験養殖に繋げてきた経緯があります。
様々な興味や好奇心から川の環境を守り、川の可能性を広げて、いろんな成果に繋げることは、木村組合長の学ぶ姿勢とたゆまない努力があってこそだな、と感じます。研究や学ぶ場所を提供しつつ、自らも学び前進していくアグレッシブな人、それが木村組合長でした。

網掛川がながれる町、加治木町

今回取材した網掛川は、霧島市溝辺町竹子(たかぜ)を水源としています。竹子からほぼまっすぐ南流し、錦江湾に流れ込む全長22.5km・流域面積73.4㎢の河川です。加治木町は、鹿児島空港から鹿児島市に向かう際に、最初にあたる市街地になります。錦江湾に面し、桜島を臨むことができる「鹿児島らしい」町のひとつです。

地図

(網掛川の流域にある特徴的なもの)
流域には、水の恵みを身近に感じるポイントが多いのが特徴です。

◉源流の竹子「そうめん流し」
◉坂出の滝の金門橋にある日本の滝百選の「龍門の滝」
◉河口の「錦江漁港」

が代表的なポイントです。

なかなか鹿児島在住の方でも、網掛川の印象は薄いと思いますが、高速道路を鹿児島市から空港へ走ると左手に見えてくる「あの滝」というと分かる方が多いと思います。「あの滝」が網掛川の「龍門の滝」なんです。わたしのオススメは、金山橋からの風景です。滝と橋がキレイに写る撮影スポットがありますので、参考にしてください。すごく絶景ですよ!(雨のあと等の増水には注意してください)

金山橋

金山橋のすぐ近くに、黒薩摩焼のひとつである「龍門寺焼き」の窯元が並んでいます。地元の材料を使った焼き物は、独特な風合いが人気で、焼き物の体験も出来ますよ。

龍門寺焼

「龍門の滝」を眺めながら入れる龍門寺温泉は、なんと300円です。

取材して気づきましたが、網掛川流域は家族連れも大満足のスポットだらけです。ぜひ川の恵みを思い切り堪能できる網掛川にお越しください。きっと新しい発見がある町だと思います!
温泉施設のリンク: https://www.kagoshima-kankou.com/guide/53531

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