川とともに暮らす「まち」〜臼杵河川漁協〜大分プロジェクト#06〜

2022/10/20

全国の漁業協同組合を訪ねるフィッシュパス漁協探訪シリーズ。

大分プロジェクト#06

2022年9月20日。

台風一過のこの日、臼杵(うすきがわ)河川漁協を訪ねた。
大分市から南におよそ40分。
指定されたのは、黄金色に輝く田んぼの一角に建つコミュニティセンター。
真新しいその建物は、地区の重要な役割を果たしていた。

お約束の時間より5分ほど早めに、センターに入った。
エントランスホールで体温チェックや手指の消毒をしていると、事務の方がにこやかに現れた。
ここで、臼杵河川漁協の疋田組合長とアポを取っていることを伝える。
「はい。聞いてます。今、ちょうど電話中で…」
見ると、コミュニティセンターの事務室で電話で打ち合わせをしている男性の姿が目に入った。
その時、少し不思議な感じがした。
なぜなら、そこは漁協の事務所ではなくコミュニティセンターの事務室。
その小さな違和感は、インタビュー後半で明らかになる。

「いやぁ、待たせたね」

お電話を終えた疋田組合長が、笑顔でこちらに向かってくる。
「じゃあ、その奥のテーブルで話そうか」
エントランスホールの続きのスペースに、テーブルセット。
いつものようにお名刺を交換し、趣旨を説明する。
ゆるやかにインタビューが始まった。

臼杵河川漁協のいま

こちらからの問いかけに疋田組合長は淀みなく答えて下さる。

「今の組合員数?
 正組合員は、56人だね。
 理想的な組合員数は、そうだね、74~75人くらいかな。
 うちは、漁協としての事務所もないんだよね。
 代々の組合長の自宅を漁協の事務所として登録している。
 事務所がなくて、困ること?
 特にはないかな。
 総会をやるときは、ここ(コミュニティセンター)を借りたりするからね」

「遊漁券の販売?
 うちは釣具店とかもないから、すぐ近くの酒屋さんで販売してる。
 そこの奥さんも組合員さんだから。
 最近は、川釣りをする人もネットでいろいろ調べてるからね。
 どこで遊漁券が買えるか、とか。
 早朝の釣り人?
 酒屋も開いてないし…そこは仕方ないよね。(笑)」

「そうそう、昔は川とともに暮らしがあったよね。
 川で遊んだり。
 子どもながらに、危険なこととか分かっていたからね。
 川で溺れて死んじゃうとか、なかったよね。
 今は、川遊びとか知らないよね。
 うちも近隣の学校の子どもたちに放流体験とか実施してるよ。
 その時も、川遊びの注意として、『一人で川に行ってはいけません』ってね。

 それでも子どもたちに川に親しむ経験をしてほしいから、毎年『川遊び』のイベントをやってた。
 臼杵の土木事務所と一緒にね。
 本来だったら、9月の今頃。
 コロナの影響で、2020年からもう3年もやっていない。
 川遊びはね~、川の中にプール(池)を作って、アユの掴み取りや塩焼き。
 ウナギとかコイも池に泳がせて。
 川の生き物は水槽に入れて展示したり。
 コロナで今年もできなくてね」
 
「カワウ対策は…。
 うちは、道路や人家の近くに川がある。
 だから、ロケット花火で追い払う。
 銃で仕留めることができれば、いいんだけどね。
 手ぐすを張ったりするよ。
 冬の寒い時期にね」
  

疋田組合長とお話ししながら、少し違和感を感じていた。
今までのインタビューでは、切迫感のようなものがあった。
組合員数の減少、高齢化、川の劣化…。
簡単に解決できない問題に、頭を悩ませる各組合長の姿があった。

だが、疋田組合長から伝わって来るのは、苦悩ではなかった。
決して諦めやシニカルなわけでもない。
ずっと笑顔でお話しくださる。
ほんの少しだけの違和感。
穏やか…というのも違う。
少し高いところから俯瞰するような感じ…だろうか。
秋晴れの日差しの中、インタビューは順調に続いた。

その時、エントランスに来た人が組合長に声をかけた。
「今日の取材は夕方やな?」
「そうそう! 夕方の5時から! よろしく!!」
「分かった」

やり取りはすぐに終わった。
「そう、地元のテレビ局の取材。
 かかしのね。
 田んぼでかかし祭りをやっている。
 先週末、台風が来たから数が少ないんだけど」

漁協の組合長が『かかし祭り』?
不思議そうに見つめると、「実は…」と組合長があるものを取り出した。

もうひとつのお名刺

「僕は自分が住んでいる地域の自治会長と、広域の自治会の長もやっているんだ。
 臼杵市の自治会連合の副会長もね。
 それと、振興協議会『たていし』を作って、その会長もしてる」

「今、75歳。
 定年退職をした15年前に、自治会長になったんだ。
 それ以来ずっとまちづくりに関わって来た。
 漁協の組合長になったのは、平成30年。
 今年で5年目だね」

「自治会活動に加えて、防災連絡協議会の初代会長や大分県農業会議の会長もね。
 今も協働募金委員会の会長もしてる。
 こんな風に地域のためにいろんな活動をしているから、地域の人はみんな知ってる。
 振興協議会『たていし』は、およそ1,000戸。 
 振興協議会のメンバーは、学校や消防、駐在所、老人会や青年会、体育協会など。
 これだけの団体が定期的に集まって、地域課題について話し合ってる。
 みんなでまちづくりをしてるんだ。
 漁協は入ってない。
 営利団体だから。(笑)

 だけど振興協議会と漁協は、協力関係にある。
 例えば振興協議会の事業として、川の両側に河津桜を植えてるんだ。
 河川の草取りをするときに、漁協から飲み物を提供したりね」

「僕の考えはね。この地区から孤独死を出さない。
 一人暮らしをしているひともいるからね。
 孤独死を防ぐために、日常的に声掛けをしてるよ。
 ふだんの繋がりが大切だよね。
 この地域も昔と比べて生活様式が変わった。
 核家族も増えたし。
 だからこそ地域での『3世代交流』が大切だと思っている。
 おじいちゃん、おばあちゃんから子どもまで。
 多世代が一緒に過ごすことで、繋がりを深めて地域をまとめていく。
 安心して暮らせるように防犯パトロールとか、交通安全講習とかもしてるよ」

疋田組合長は、熱く語った。
「公助・共助・自助ってあるよね。
 このうち、共助と自助を自分たちでやろう! と。
 災害の時にも、対応できるようにね。
 そう、コンパクトシティ!
 コンパクトなエリアに、学校があって病院とかスーパーとか、ライフラインが揃っている。
 そこにひとの繋がりがあるまちづくり」

川の色は何色?

「今後の動きとしては、大分市から臼杵市を繋ぐ高速が増幅されるんだ。
 今の片道1車線から2車線になる。
 それに伴い、川の工事も入る。
 
 川って稲作にも使うし、飲み水にもなる。
 生活の糧なんだ。
 本当に大切」

「川の色って何色だと思う?
 本来は、水色。
 空色っていうのかな。
 でも、今は緑だよね。
 川にアシとかヨシとかが生えて緑色になっている。
 川に草ばっかり生えてる。

 河川管理をしないといけない。
 でも、川をただ平らにするんじゃだめなんだ。
 ちゃんと魚が生息できるように。
 魚が棲める構造にしないとね。
 できるだけ自然に近づける。
 土木事務所と工事をする時、石を積んで山を造ったりね」

インタビューの間中、組合長はずっと笑顔だった。
疋田組合長に感じた違和感の謎が解けた。
組合長の実践のステージは、『まち』なのだ。
『まち』があって、『人々の暮らし』がある。
『まち』でお祭りをしたり、防災訓練をしたり。

ふだんの生活に『ひととひと』が共に過ごす仕組み(行事)が、ふんだんにあって、みんなで知恵や意見を出し合いながらそれぞれが人生を送る。
そこに『川も』流れている。
組合長が言ったように、川は『生活の糧』。
川はまちの一部であり、かけがえのない資源(価値)なのだ。

 秋祭りに向けて

11月6日(日)には、地域のために大きなお祭りをやる。
やはり3世代交流が目的だ。
会場はこのコミュニティセンター。
目玉は、子どもたちが作っているもち米で『餅つき大会』。
そして駐車場には、消防車やパトカー、白バイが並ぶという。
災害時に使うユンボも。
関係各位と連携が取れているので協力体制も完璧だ。

この日、もうひとつの試みをする。
災害時、小学生の安全を確保するための仕組みづくり。
その予行練習を子どもや保護者と実施するという。
紅葉が深まる霜月に、また地域の笑い声が弾ける日が刻まれる。

臼杵河川漁業協同組合

住所: 大分県臼杵市大字望月981番地
TEL: 0972-62-4574

※遊漁券の詳細については、下記をご参照ください。

周辺情報

臼杵市は県の東海岸に位置しています。

臼杵市といえば、城下町の風情が色濃く残るまちです。
臼杵城跡がまちの中心部にあり、隣接するように商店街や寺院が軒を連ねます。
このエリアは、まち歩きをするには、ちょうどいいコンパクトさです。

臼杵市観光交流プラザ

住所:大分県臼杵市臼杵100−2

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フィッシュパスは川を囲んで、釣り人漁協地域社会を結び、豊かさと賑わいを提供します。

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