九頭竜川がなぜ「サクラマスの聖地」と呼ばれるのか
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Toggle都内のある釣具店の店主は、九頭竜川でサクラマスを釣り上げた写真があれば10年は自慢できる、と言います。サクラマスに挑み続けて10年、20年というサクラマスアングラーは少なくなく、10年サクラマスを追い続けているが、一度も出会いを果たしたことがないと言う方もいます。数も少なく、巡り会うことが非常に困難であり、それだけに謎が多い魚です。サクラマスはアングラー達を引きつけてやまない特別な存在であり続けています。
サクラマス釣りは九頭竜川以外でも、玉川(秋田県)、子吉川(秋田県)、雄物川(秋田県)、米代川(秋田県)、最上川(山形県)、赤川(山形県)、北上川(岩手・宮城県)、荒川(新潟県)、三面川(新潟県)、胎内川(新潟県)、加治川(新潟県)、黒部川(富山県)、手取川(石川県)、千代川(鳥取県)が盛んです。
毎年2月になると、釣り雑誌が臨時増刊として各河川のサクラマス特集を行います。
その中でも、九頭竜川がなぜ「サクラマスの聖地」と呼ばれているのか。
九頭竜川(福井県)がサクラマスの「聖地」とも、「生地」とも呼ばれる理由は、以下の経緯から見えてきます。
1988年
著名なフライフィッシャーである沢田賢一氏が、フライによるサクラマス釣りを日本で初めて九頭竜川で確立。またその内容が雑誌に掲載されることにより、一気に九頭竜川でのサクラマス釣りの遊漁者が増加。
1993年
九頭竜川においてヤマメが漁業権魚種となり、同時に雑魚券の対象魚種に「ヤマメ(サクラマス)」と書かれるようになった。
1994年
釣り仲間グループによるサクラマスの稚魚放流やキャッチアンドリリース推進活動、サクラマス釣りのローカルルール周知活動が行われる。
1998年
福井市内の釣具店によるサクラマスダービーが開始され、サクラマスの釣果記録が取られるようになった。
2003年
サクラマスの好釣場(約12km区間)における漁法をルアーとフライに限定した遊漁規則を制定(エサ釣り禁止)。
提供:九頭竜中部漁業協同組合
2007年
福井県によるサクラマス資源増大事業の開始。九頭竜川産サクラマスの稚魚(九頭竜川に遡上したサクラマスから採卵、孵化させ育成した種苗)を放流し、九頭竜川固有のサクラマスを保全。
2008年
フライフィッシャーグループによる河川環境とサクラマスの保全活動が始まり、福井県、漁協と連携する。
2013年
福井県内のほとんどの河川でアマゴ放流が廃止され、ヤマメに切り替わり、サクラマスとサツキマス(ヤマメとアマゴ)の交雑を防ぎ、本来の生態系回復を目指す。
現在
現在では河川の連続性の回復(遡上障害の改善)、人工産卵場の造成など河床状態の改善、さらに全国初の試みとして、人工産卵場ユニットによるサクラマスの産卵実証に成功するなど、サクラマスの自然再生産を第一とした保全増殖が図られ、これらの取り組みは国土交通省、福井県、流域漁協、福井県立大学、フライフィッシャーグループなどの連携によって行われています。
また、地元の漁協や釣り愛好家が主体となり、地域一体となってサクラマスが育つ環境作りと、地域ブランド化活動が取り組まれています。毎年、持続可能な河川環境つくりをテーマに「サクラマスサミット」が開催されており、年2回の地元保育園児によるサクラマスの稚魚放流などが行われています。
地元漁協そして釣り愛好家、地域、行政によるサクラマスへの思いと、そして絶え間ない活動の結果、全国の釣り人からサクラマスの「聖地」九頭竜川と呼ばれるようになり、また「生地」であり続ける所以であると考えます。
サクラマスのペアリングと脇を泳ぐ雄ヤマメ
サクラマスのペアリングとメスに行動を示す雄ヤマメ
サクラマスの仔魚
日本初の実証として、人工産卵床を使った資源の増殖によって生まれたサクラマスの稚魚(福井県内水面総合センター内にて展示)
第6回サクラマスサミット(2017年3月4日 森田公民館にて)
参考文献
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