渓(たに)の早春賦

暖冬だと巷説よろしく、まだ早いのではと思いつつも3月の声を聞いた途端の温みある空気感に誘われるようにルアーロッドを抱えて今期初となる渓流へ。
所用のため15時半と遅めともいえる入渓時間ではあったけれど、春まだ早い今時期っていうのは、水温が一番上がる昼過ぎ以降が良いというのがセオリーでもある。
実際に川辺に立ってみれば、それこそ「春は名のみの風の寒さや…」と口ずさみたくなるほど。なるほど、これでは確かに谷のうぐいすだって時にあらずと声も立てまいよ、と。
今日の傾向を早く把握するため、シンクレート(沈下加減)の違うミノーやスピナー、スプーンと総動員して探っていくうちに、ある程度の傾向と対策が固まってきた。
それを確かめるように、レンジ(ルアーが泳いでくる水深のことで「タナ」とも言う)やレーン(ルアーが手前に向かって泳いでくるコース、軌道のこと)、そしてルアーアクションの強弱と移動距離を丁寧に丁寧に流していくことで、後半は劇的に反応が良くなってきた。レンジやレーンを外し過ぎると全く何も起こらなくて魚の気配すら感じられないシビアさの極みでもあったけれど、実はそれがこの時期の釣りの面白みでもあるとも思うので、自身としてはむしろ楽しい釣りになったと思っている。
加えてこの時期に面白いのは、パーマークなどがしっかり出ている「居着き系」と、降海準備ともいわれる全身の鱗の白銀が強くなる「スモルト系」が釣れること。
※下の写真の上が居着き系で下がスモルト系。体型も居着き系は体高があるのに対しスモルト系はスレンダーなことがほとんど。特にスモルト系は褄黒(つまぐろ)と呼ばれる各ヒレの先端が黒ずむことが特徴として挙げられる
こういった生態や個体差を知りつつ釣れ方の差などを意識してみながら釣りをしていくことで、より彼らとの関わり方を深く楽しめるようになると思うのである。
暗くなって危なくなる前に退渓しましたが、ざっと2時間半ほどの釣りで、結果的にはつ抜け(和式数え方はひとつ、ふたつ・・・ここのつと、9までは「つ」が付くが、10以上は付かなくなることを以て、10以上釣れた場合に「つ抜け」と称する)することができたのは、この時期の北陸の渓流を知る者からすれば奇跡的に思える好調果ともいえるでしょう。
まだ早いかも…と思いつつのスタートでしたが、やはり現場に立ってみないとわからないものですね。
自然は大いなる不思議です。多くの不思議と接することが適うのも渓流釣りの魅力でしょう。案ずるより産むが易し。まずは底に立ってみることが出逢いへの第一歩なのです。
【タックルデータ】
ロッド:渓流用スピニングロッド5.3ft
リール:2000番スピニングリール
ライン:PE 0.6号+フロロカーボンリーダー1.5号
ルアー:ミノー、スピナーなど
report by EGOIST/大嶋信慈
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