戻る

ヤマメ(山女魚・山女)という魚

2017/02/17 FishPass


やまめ(山女魚・山女 学名:Oncorhynchus masou)は、サケ科サケ属に属し、日本と台湾、日本海のアジア側に分布する。

語源

ヤマメの語源に関して、田中茂穂は『ヤマメとマスとの分類学上の関係及びその学名』にて次のように述べている。

「ヤマメとは何の意義であらう。或人は山に居る美しい魚であるから、山女と書くと云うし、或人はヤマメには雌がなくて、雄ばかりであるから、ヤモメ即ち鰥(やもめ)であると云ふ。実際に此魚をヤモメ又はヤモと東京附近の山間部で言つて居る。然かしヤマメの語源は一寸験(ちょっとしら)べ難いことと思ふ」

ヤマメは幼魚期までは、形生態は違わないが降海型と河川型の2型に分かれる。銀毛化に変態して降海する型がサクラマス(桜鱒 学名:O. masou )。幼魚紋(パー・マーク)を残したまま成熟し、河川で一生を送る河川型がヤマメである。河川型であるヤマメの体型はやや側偏し、背側はわずかに緑色をおびた黄褐色、腹部は白い。体側には幼魚期の特徴である、7~10個の暗青色の幼魚紋(パー・マーク)が並列し、背側から側線にかけて小点が散在し、側線に沿って淡い赤色帯が通っているものも見られる。成長のすぐれた雄は1年目、雌は2~3年目で成熟し、イワナよりやや早い10月中旬~11月上旬にかけて産卵する。若年魚は生存して翌年に再び産卵に加わる。寿命は、諸説あるが3~4年と言われ、全長15~25cm程度の方が多い。

呼称

ヤマメの地理的分布図については、神奈川県箱根以北と北陸地方、山陰地方の日本海側の河川、九州太平洋側の河川に分布していると言われている。南限は鹿児島県川内川(せんだいがわ)、宮崎県広渡川(ひろとがわ)である。標準和名であるヤマメは一般的に山女魚・山女と書かれ、関東地方では普遍的な名称で呼ばれているが、地方名が多い。北海道・東北地方では「ヤマベ」であり、栃木県日光地方「ヤモ」、岐阜県飛騨地方「ハエ」、中国地方「ヒラメ」、九州地方「エノハ」と呼ばれることもあり、地方ごとに特色のある名称で呼ばれている。

生態

ヤマメは動物食で水生昆虫や落下昆虫を食性としている。保水力のある緑豊かな山があり、枯れることの無い比較的流れの速い川が渓流が生育条件である。ヤマメは「渓流の女王」とも呼ばれ、エサや、毛針、ルアーが視界に入り追いかけても、食いつかなければ、二度と振り向いてくれないという釣り人声もあり、イワナやニジマスと比べ警戒心が非常に強く、釣る際には非常に難易度の高い魚である。

 

生息分布

サクラマス・ヤマメは日本と北太平洋のアジア側(オホーツク海・沿海州・朝鮮半島東部および台湾)に分布し、銀毛化変態して降海するのがサクラマス、体側に7~10個の幼魚紋(パー・マーク)を残したまま成熟し、河川で一生送るのがヤマメである。

台湾北部、雪山山脈3000m峰に抱かれた大甲渓源流域に生息するタイワンマスは、現地名をブンバンといい、最近の研究ではサクラマスの亜種とする説が有力である。

サクラマス幼魚の銀毛率は「北高・南低」を示し、分布域の南の地域になるほど河川型のヤマメが多くなるという、生態的な地域的特性がみられる。

川単位での生息分布

北海道や本州の河川では、一般的に源流からイワナの単独領域であり、それに続きイワナとヤマメないしアマゴが混在する短い領域となり、さらにその下流に続く長いヤマメないしアマゴの単独領域となる。ただし例外として青森県の下北半島大畑家川のヤマメ(スギノコ)がある。またイワナが分布しないといわれる四国・九州地方では、夏季の水温が摂氏20℃以下の山地渓流であれば、四国地方ではアマゴが源流域を占めており、九州地方はヤマメもしくはアマゴが源流域を占めている。

今西錦司の『いわなとやまめ』によれば、共存河川においてイワナとヤマメ・アマゴの分布決定要因は、水温と川床勾配としている。夏季水温摂氏が13~15℃を境として上流がイワナ、下流にヤマメが棲み分けられると述べている。また河川勾配に関しては、ヤマメ・アマゴの分布上限が落差1m程度の滝によって規定されている。また、イワナとの占有度の切り替わりとして、底質(礫の大小)や河川形態が急変する例の多いことが指摘されている。

また石城謙吉の『イワナの謎を追う』では、伊茶仁川の観察から、オショロコマとアメマス、ヤマメの3種が混棲した際の「食性の特殊化」がおこると述べている。オショロコマは底生動物、アメマスは流下昆虫、ヤマメは落下昆虫をより多く食い分けると言っている。食性の違いを発揮する背景には、それを支えるべき生態面・形態面での微妙な差異が見られる。すなわち隠れ家への執着が強く、底棲性のイワナの体型がやや円筒形であるのに対して、側扁(魚類の体形が、体の左右から押しつぶしたように平たいこと)した体型のヤマメ・アマゴは遊泳性が強くかつ、積極的な水面を攻めていく傾向がある。

イワナとヤマメ・アマゴの分布決定には水温や河床勾配という環境条件の他に、食物や生活空間、産卵場所などをめぐる、なわばりや順位という秩序確立がある。

ヤマメの成長

同一河川でも生活空間やえさの量、生息密度などの諸要因により個体差がある。大渓谷では1年で体長20cm、2年で25~28cmに達するものも見られ、一部の早熟雄をのぞく、大部分の雄雌が2年目で15cm前後に成熟する。雄は婚姻色で黒色に変化し、イワナよりもやや早い紅葉初期~盛期(10月中旬~11月上旬)にかけて、河川水が浸透する渕尻の平瀬を選び、雌雄一対となって産卵する。寿命は2~3年であり、まれに4年まで生きるものもあるようである。

ヤマメを釣るということ

井伏鱒二は『川釣り』の釣談義で次のようなことを述べている。

「山女魚なんかは難しいです。習性を知る必要があります。大体、場所と季節によって、釣りかたに手加減がありますが、例えば、まだ淵にひそんでいる雪代山女魚を釣るときには、もし穂先きの柔らかい竿なら充分に送り込んでから合わせるのも一方法です。・・・しかし、山女魚は鈎(はり)にかかると、川かみに向かって逃げようとする習性があります。同時に頭を左右に振る習性があります。それで川かみに引き上げると、顎のない鈎だから抜け落ちるおそれがある。ことに堅い穂先きの竿では、必ず落ちるものと思わなくてはいけない。それから、真上に引き抜こうとすると、川底にもぐろうとする習性がありますから、大もののときは、川しもに引き寄せることが肝要です。釣っている当人は、無心でなくて夢中です。」

参考文献:鈴野藤夫『山漁 渓流魚と人の自然誌』pp.46-71,1993,農山漁村文化協会

参考文献:鈴野藤夫『魚名文化圏』ヤマメ編 pp.11-169,2001,東京書籍

参考文献:井伏鱒二『川釣り』p51,1952,岩波新書


関連記事

search star user home refresh tag chevron-left chevron-right exclamation-triangle calendar comment folder thumb-tack navicon angle-double-up angle-double-down angle-up angle-down quote-left googleplus facebook instagram twitter rss