【本紹介】「九頭竜川 ~鮎釣り漁師・愛子の希望~」

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Toggle1992年度新田次郎文学賞を受賞した大島昌宏氏の小説「九頭竜川」が、2022年の夏に「つり人社」より復刊されました。福井県九頭竜川を舞台に、鮎漁師として生きていく女性の物語です。
待望の復刊!「九頭竜川 ~鮎釣り漁師・愛子の希望~」
昭和20年7月19日、第二次世界大戦による空襲で福井は大きな被害を受けた。
女学校1年生だった愛子は、家族とともになんとか爆撃からは逃れたものの、その甚大な被害の惨状に衝撃を受けた。
その3年後、今度は福井を地震が襲う。
15歳で両親と祖母を失うことにより、人の命の脆さを思い知らされ、死は不意に訪れるものだと悟った愛子。
震災後、鮎漁師である祖父、源造と暮らしていた愛子は、父を奪った九頭竜川に挑戦したいと鮎漁師になることを決意する。
と、ここまでは、戦争・震災とつらい体験をしながらも自らの人生を切り開いていく物語ですが、それだけじゃない!
この本には鮎の友釣り愛好者にはたまらない面白さがいっぱい詰まっています。

九頭竜川でお馴染みの釣り場が数々登場
作中には、「北島」「飯島」「五松橋」など、九頭竜川中部漁協管区内でお馴染みの釣り場が数々登場します。
あー、あそこかー!と、情景を頭に浮かべながら読み進めていく楽しさがあります。また、郡上長良川へ遠征に行くシーンも。
友釣り愛好者も思わず唸らされる友釣り描写
友釣りの場面が幾度も出てきますが、仕掛けから釣り方、野鮎の生態まで、リアルで繊細な描写は読み手にその情景をありありと想像させます。特に、九頭竜漁師の伝統的な釣り方「引き釣り」を愛子に教えるやりとりでは、鮎の動きが目の前に浮かんで来るようです。
源造の愛子と鮎への想いが熱い!
大事な孫娘を鮎漁師にさせてよいのか悩む祖父の源造ですが、愛子を鮎漁師にすると決意した途端スパルタに変貌。愛子を一人前の漁師に育てるため熱心に教えます。1年という限られた時間を精いっぱい生きる鮎を愛おしく思う源造。とりわけ、激流を遡上してくる鮎は生命力が強い。そんな九頭竜の鮎のように愛子にも精いっぱい生きて欲しいと願う源造の優しさが垣間見れます。
激流の中、鮎漁師として成長していく愛子を応援したくなる
女に鮎漁師なんかできるのか?とまわりから言われながらも、愛子は激流の中、試行錯誤しながら上達し、大会にも出場するほどになります。現在でも女性鮎釣り師は数少ないですが、当時の女性鮎釣り師が全くいなかった世界に飛び込む勇気には、同じ女性として心を動かされました。
そしてこの夏、「愛子」が九頭竜川に蘇る!?九頭竜川でレディース大会開催
この作品の舞台となった九頭竜川で、今年の夏、女性だけの鮎釣り大会が開催されます。
昔と違い、今は友釣りを楽しむ女性も増えてきました。私もその一人です。
九頭竜川といえば激流のイメージが先行し、女性には難しい釣り場なのではと思われがちですが、女性や初心者にも楽しめる釣り場も多数あります。男性だけでなく、女性にも九頭竜川の魅力を知ってもらうきっかけになればと、九頭竜川中部漁協で初のレディース杯が開催されることになりました。同じ年に「九頭竜川」が復刊されることになったのも、愛子が繋いだご縁なのかもしれませんね。
初代「愛子」はどんな鮎女師が手にするのでしょうか。今から楽しみでしょうがありません。
【書籍情報】
題名:九頭竜川 ~鮎釣り漁師・愛子の希望
著者:大島 昌宏
出版社:つり人社
単行本:1,980円
Amazon:こちら
【レディース杯会場の五松橋】


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