日本で唯一!チョン掛け体験施設〜大分プロジェクト#05〜番匠川漁業協同組合

2022/08/24

大分プロジェクト#05

大分市から南へ約1時間。現在、佐伯市は、人口約7万人。

宇目町や直川村、本庄村などと広域合併し、現在に至っている。

訪れたのは、佐伯市番匠川(ばんじょうがわ)漁業協同組合。

インタビュー中、泥谷組合長は地域貢献という言葉を何度も口にした。

「儲けではなく、地域貢献。」

その想いと実践を探るインタビューとなった。

日本で唯一!チョン掛け体験施設

7月13日。

この日を取材日に選んだのは、理由があった。

ここには、日本で唯一の施設がある。

鮎のチョン掛け体験施設だ。

※鮎のチョン掛けとは、大分県南部の番匠川水系独特の伝統漁法で、1.5mほどの竹竿の先につけた釣り針に鮎を引っ掛ける。網で鮎を囲い込んだ後、水中眼鏡を付けて潜ったり、のぞき込んだりして鮎を追って「ちょん」と手首を使って引っ掛ける。”鮎のちょん掛け”として「おおいた遺産」に登録されている。

去年は、約2,000人もの人が訪れ、チョン掛けを楽しんだという。

7月17日からの一般利用開始を前に、地域の中学生たちがチョン掛け体験に招かれた。

およそ70名。

どの顔も好奇心でいっぱいだ。

夢中になる中学生たち

快晴の空の下、まさにチョン掛け日和。

まずは組合長が、竿の使い方やチョン掛けのやり方などを説明した。

「竿は組合員の方々の手作りであり、壊れたら修理をしなくてはいけない。

大事に扱ってください。」

子どもたちも真剣に聴き、頷いている。

続いて地元の番匠おさかな館のスタッフの方が、鮎の生態についてレクチャーをした。

約20分後、いよいよチョン掛け体験スタートだ。

最初はどの子も思うように掛からない。

何度も竿を引くものの、空振りばかり。

子どもたちは「掛からない~!」と言いながらも、何度も挑戦する。

そのうち、「あっ、掛かった!」という声があちこちから聞こえきた。

開始から5分ほど。

「ワタシも!」

「ボクも!」

あっという間にコツを掴んだ子どもたち。

歓声を上げながら、みなが熱中し始めた。

掛かった鮎に触れなくて戸惑っていた子どもも、やがて上手に魚を針から外す。

できないことがどんどんできるようになる。

まさに「体験」だ。

チョウザメと泳げるプール?!

ひとしきりチョン掛けを堪能した後、ここでの「施設体験」はまだまだ終わらない。

チョウザメと泳げるプールがあるのだ。

今夏は、宮崎の延岡からチョウザメ4匹を借りている。

チョウザメは、サメではなく安全な魚だ。

鱗の形が蝶が羽根を開いた姿に似ていることからチョウ(蝶)の名がついたらしい。

興味を持った子どもたちが、プールにそろりそろりと入っていく。

チョウザメにそっと触れるこどもたち。

こんな体験もここならでは!

そして!

なんと鮎の塩焼きが振舞われた。

炎天下の中、黙々と焼き続ける地域の女性ボランティアの方たち
続々と集まってくる子どもたち

持ってきたお弁当に鮎の塩焼きを添えて。
最高のロケーション、最高のランチ!

組合長へのインタビュー

インタビューをしたのは、子どもたちを迎える1時間前。

組合員やボランティアの方々が、集まって準備の確認をしていた。

準備があらかた終わった組合長がインタビューを受けてくれた。

偏光グラスで隠れているが、優しい眼差しで子どもたちを見る泥谷組合長

この施設は、去年造ったんだ。

日本で唯一だよ。

チョン掛け体験ができる施設。

実は、他所が真似して造ろうと思ってもそう簡単に造れない。

なぜかって?

まず、鮎を買わないといけない。

その為には、ルートも予算もいるよね。

次に池がないといけない。

中間育成や鮎の管理をするための。

最後に広さ(スペース)がないと。

うちは、これだけ広大な場所があるからね。

池もあればプールもあるし、食事スペースや駐車スペースもある。

 

僕は今、組合長4年目。

この施設を造る構想を始めたは、3年前から。

まず最初の1年間は、漁協の業務内容の見直しと将来に向けて何をすべきか考えた。

そして、「これならやれる!」と思ったんだ。

各方面の業者にも打診もしたよ。

目指すのは広域の『地域貢献』

ここを造ったのは、目先の利益が目的じゃない。

地域貢献。

僕は、自分の漁協だけが儲かればいい、とは思わないんだ。

採算が取れればいいと思っている。

だから利用料金も安いよ。

 

僕が考える仕組みはこう。

山間部ってお客さんを集客しても滞在時間が稼げないんだ。

飲食販売をしたとしても、よくて2時間くらい。

経済効果は大きくないよね。

ここならチョン掛けをしたりプールで遊んだり、思い切り遊べる。

鮎の塩焼きも食べれるけど、自分たちで持ち込んだお肉とかをここで焼いてもいいんだ。

入場料は、小学生が1,000円。

中学生以上は、1,500円。

ここで半日から1日たっぷり遊んだ後は、地域に回遊してほしいんだ。

 

近くなら、おさかな館や道の駅がある。

足を延ばせばこの沿線上に、宇目や直川、本匠といったエリアがある。

宇目は、唄げんか大橋(地元の民謡『宇目げんか』にちなんで命名)という観光目玉がある。

直川だったら、キャンプ場やかぶと虫。

本匠には、水車があるしね。

それぞれ、観光資源は持っているんだよ。

でも、単体でお客さんを呼ぼうとすると難しかったりするんだよね。

去年、コロナ禍だったけど、うちには2,000人の人が来た。

その7割が市外だったんだ。

大分市とかね。

うちに来てくれたお客さんたちにどんどん地域の他の施設・エリアに行ってもらって、楽しんでもらう。

点(各施設)じゃなくて面(=地域)で、経済発展をしていくんだ。

 

この施設を造るのに、それなりの費用がかかった。

今年は、屋根やトイレを増設したからまた費用を追加。

なかなか大きな投資だよね。

もちろん反対意見もあるよ。

でも、昔ながらの漁協じゃいかん!と思っている。

赤字を怖がってばかりいても、ね。

 

費用面では行政の支援もあるが、大部分は地元の企業さんからの協力金によって運営している。

行政や地元企業と共に

行政に支援してもらうには、市が理解してもらえるような計画性や将来性を打ち出さないと。

ここは、市にとっても大きな経済効果になると確信している。

できれば市長が、「うちには日本にひとつしかない素晴らしい体験施設があります!」って、誇ってほしいんだけどね。

それには、時間がかかるよね。

 

地元の企業が協賛してくれるのも、自分たちが出した協賛金が何に使われているかがはっきり分かるから。

そして間接的に彼らも地域貢献していることになるしね。

10年後、20年後を見越して

ここは体験施設。

子どもたちに魚に触れ合う体験をしてもらう。

その子たちが、大きくなって川で魚釣りしてみようかな、とか。

佐伯っていいまちだな!って、山間部に住んでくれたりとか。

10年、20年先を見越しているんだ。

橋を造るのに似ているよね。

広い大きな橋。

 

今年、嬉しいこともあったよ。

この地区のお年寄りが、楽しげに話してくれたんだ。

「ここができてよかった!

 夏休みに孫たちが帰って来た時、ここに連れて来れる」ってね。

高齢になるとなかな遠くに連れ出すのは、難しくなるんだよね。

こんな風に言われるとき、一番やりがいを感じるよね!

 

そうそう、去年この施設の名前をどうしようかって話し合ったんだ。

お洒落なネーミングとか、ロゴとかっていう意見も出たよ。

でも、僕としてはここは「体験施設」。

佐伯市のためにやっているし、市に貢献したいと思っている。

市や県の観光課や水産課とタイアップして、地域が存続できるように。

ひとが喜ぶことをすれば、いずれは巡り巡ってくる。

 

泥谷組合長は、そう言って笑った。

その視線の先には、子どもたちが嬉々として帰っていくのが見えた。

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