360°水中カメラを活用する!

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釣りをする人はだれでも、水中の様子を見てみたい、魚の動きをじっくり観察してみたいと思うものです。いざ水中メガネをして潜ってみても、魚が逃げてしまったり、息が続かず短時間の観察で終わってしまいます。そんな中、フィッシュパスではこれまでもアクションカメラ(SONY製)やGoPROによる設置型の撮影で水中の様子をお伝えしてきました。
しかし、アクションカメラやGoPROによる撮影では、実際に何が写っているかは水から上げて再生確認するまで分かりませんでした。Wi-Fi接続によるオプションの液晶モニター、スマホからの遠隔モニタリングも、数十センチの水深で電波が遮断され、リアルに見ることが出来ませんでした。ましてや、カメラを水中に入れて動かすと当然ながら魚に気づかれて逃げられてしまい、生き生きとその川で生活する魚の様子を捉えることは非常に難しいことでした。
また、今回の機種を使って分かったことですが、設置したカメラレンズの画角に必ずしも魚が入って泳いでくれるとは限りません。
それらの課題を解決するのが360°水中カメラです。
insta360 ONE X
360°カメラ本体を水中に沈めて撮影するためオプションの潜水ケースに入れて、流されないよう重り石にベルト付き雲台で固定する。
製品紹介
今回導入したカメラは「insta360 ONE X(中国 深セン Shenzhen Arashi Vision社)」です。
弊社で利用するドローン「MAVIC 2 ZOOM(中国 深セン DJI社)」ですので中国 深センのものづくり拠点としてのパワーを感じます。
360°カメラはその名の通り全方向の撮影が同時に一台のカメラで可能です。本機は表裏2個の広角カメラで撮影した画像をつなぎ合わせて1枚の画像(正距円筒図法=エクイレクタングラー形式)にします。
普通のカメラだと、被写体の魚がフレームアウトしてしまわないように手動でカメラの方向を変えなければなりませんが、360°カメラの場合、遮蔽物に隠れたり奥行方向に逃げてしまわない限り撮影し続けることが可能です。
これによって撮影出来たのがこの動画です。
野アユ掛かり水中映像
この動画は、鮎の友釣りで、おとりアユを空中移動でポイントに送り込んだ映像から始まります。野アユが縄張りに入ってきたおとりアユを追い払おうと、何度かアタックをしている内にハリスに掛かります。まだ元気なおとりアユは、必死に抵抗しようと上流に泳ごうとしますが、最後は野アユのパワーに負け、下流に押し戻され、最後は釣り上げられていきます。その様子を完全にフレーム内に捉えています。これは現場でカメラを動かして撮ったものでは無く、360°撮影した動画を専用アプリで後から視点を編集して出力したものです。
通常のリアルタイムの撮影で、とても早く動き回る鮎をフレームアウトさせること無くカメラを振り回して捉えるのは非常に難しいです。(複数回の試行を繰り返しても無理でしょう)これが360°カメラであれば後からフレーム単位で停止させながら編集が出来ます。
撮影の様子
以前の記事【夏休みの課題特集】 川のいきもの(理科研究編)でご紹介した九頭竜川のほとりを再度このカメラで撮影してみました。
河床がよく見える透明な水質。水深はヒザが浸からない40cmほど。
360°動画の編集は大変?!
360°映像の出力には二種類あります。
一つは360°動画をそのまま出力し、映像を見るときはユーザーが視点を自由にできるもの。これが一般に360°動画だとかVR動画と呼ばれるものです。
それが今回撮影・編集したこの映像です。
360°VR映像
スマホの場合、YouTubeアプリで再生してください。画質設定を最大の4Kにすることで綺麗に見られます。(処理が重い場合は画質を下げてください)
視点をマウスカーソルやスマホ本体を傾けることで変えられます。
もう一つが、最初に紹介した野あゆの入れ掛かり動画のような、360°映像の任意の視点を切り出して通常の動画として出力するものです。
どちらも一長一短ありますが、後者の切り出し動画ではユーザーに視点を動かさせることなく編集者の意図にそった映像を見てもらうことが出来ます。一方、代償として5.7kの解像度から一部を切り出すので解像度が落ちます。このカメラの場合は2K(フルHD 1920×1080)になります。
これら動画の編集と出力は対応した編集ソフトを使います。
スティッチング映像の編集
最初に「スティッチング」という処理を行って2つのカメラで撮影された複数の画像を1枚の画像につなぎ合わせる処理が必要になります。
Windows及びMacでは専用ソフト「Insta 360 Studio」を利用します。
Mac用の画面。Windows用もあります。スマホアプリと違い日本語のローカライズは無し。
スティッチング処理が終わったファイルは360°動画編集に対応したソフトで編集します。
Windows及びMacでは*Adobe Premiere Pro、MacではApple Final Cut Pro Xが対応しています。(*Adobe Premiere Proではスティッチング処理をInsta360 Stdioを使用せず専用のプラグインを使うことで直接編集が可能です。)
今回はFinal Cut Pro X(Mac専用ソフト)で試してみました。字幕一つ入れるのも通常の動画編集よりずっと複雑で、360°の任意の位置を指定するのも一苦労でした。
通常の動画では縦横2次元の位置を指定するだけですが、360°どこにでも字幕を入れられるとなると適切な位置を指定するのが難しいです。
また、PC性能もハイスペックでないと視点を動かすだけで動作が重くなり作業に時間がかかります。
超かんたんスマホアプリ編集
当初は慣れているMacでの編集にチャレンジしましたが、かなり難しく時間もかかるためスマホアプリでの編集を試してみました。
専用アプリはiOSとAndroidの両バージョンがあります。今回は手持ちのiPhone X (iOS)にアプリを入れて試しました。
このアプリでは無線(Wi-Fi)もしくは有線(Lightning・USB-C・MicroUSB)でカメラと通信してコントロール出来ます。撮影の開始、撮影中の映像確認、記録済み映像のスマホへの転送等。
映像を編集するには本体のSDカードに記録されたデータをアプリを使ってスマホのストレージに転送します。この際も、記録映像の中から必要な部分だけを指定して転送することで時間を節約できます。(1分のファイルサイズがおよそ0.5GB)有線でも転送速度はUSB2.0規格程度と思われるので、大きなファイルを転送して編集するのには時間がとてもかかります。長時間の360°動画を編集するには高性能のPCにmicroSDカードでファイルごと転送するのが良いでしょう。
アプリの使い方はとても簡単で、Macで編集したときのような動作の重さはほとんど感じられません。
360°動画を出力するには必要な部分だけ切り抜いてiPhoneの写真アルバムに落とすか、insta360が用意するサイトにアップロードしたり直接YouTubeに投稿することも可能です。
iPhoneの写真アルバムに落とした場合は、360°動画を写真アルバム上で再生してもプレイヤーが360°に対応していないため、平面の歪んだ画像が表示されるだけです。動画をパソコンに移して360°再生に対応したプレーヤー(VLCメディアプレイヤー等)で再生する必要があります。
性能にあった使い方が重要
本機は電源供給なし満充電で5.7k360°動画を1時間近く撮影出来るので、観察目的に使うのにも便利です。水中撮影ケーブル(同軸ケーブル両端だけ露出した指向性のWi-Fi漏洩ケーブル)を使えばリアルタイムで水中の様子を確認できるので水中の様子を見ながら釣りをすることも出来るでしょう。このように360°カメラは非常に便利な使い方ができる一方、撮影時のカメラ設置や視点の管理には気をつける必要があります。ともすれば普通のカメラで撮ったほうが良い場面はたくさんあります。使い所に気をつけて今後もフィッシュパスでは読者のみなさんが見たくなるような動画を作っていきます。
スペックまとめと価格
製品仕様
レンズ口径: F2.0
写真解像度: 18mp (6080*3040)
動画解像度:5760*2880@30fps, 5760*2880@24fps, 5760*2880@25fps, 3840*1920@50fps, 3840*1920@30fps, 3008*1504@100fps
写真フォーマット:insp、jpeg(アプリ経由で変換できる)、dng(RAW)(PC/Mac端末のみ対応する)
動画フォーマット:insv、mp4(アプリ経由で変換できる)、LOG(PC/Mac端末のみ対応する)
動画コーディング:H264
映像ビットレート:最大120Mbps
ジャイロスコープ:6軸ジャイロスコープ
公式オンライストア価格(2019’8/23調査)
本体(本体、バッテリーパック1個、各種ケーブル付き):52,300円
オプション
潜水ケース :9,980円
miciroSDカード64GB:2,810円
バッテリーパック:2,310円
フィッシュパスは川を囲んで、釣り人と漁協と地域社会を結び、豊かさと賑わいを提供します。
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