漁協とは #2漁協のしごと

2020/01/29

漁協とは #2漁協のしごと

漁協のしごと

前回の記事「 漁協とは#1漁協の組織構成」に引き続き、今回は漁協の主な「しごと」についてお話します。

日本には大なり小なり川がたくさんあります。釣りをしたり、川辺で水遊びをしたり、私たちにとって身近な存在ですが、その川は日々管理され、守られているということをご存知でしょうか。その大切な「しごと」を担っているのが内水面漁業協同組合=漁協です。

内水面において漁業権(第5種共同漁業権)の免許を受けた内水面漁業協同組合(以下、漁協)には、資源が枯渇しないよう川の生き物の増殖義務が課せられています。これにより、内水面漁協は、釣り人の遊漁料や組合員から納付される漁業権行使料を用いて、漁業権対象魚種の種苗放流や漁場の管理等を行います。また生態系と生物多様性に配慮しながら、水産資源の維持増大と遊漁を含めた利用の両方を図る役割を担っています。このように、漁協には川の資源を守り、遊漁者への利用のために様々な仕事があります(一部引用:石田.2004)。主な「しごと」を7つに整理してみました。

7つのしごと

①増殖育成・放流

親魚採取、採卵ふ化、育成、放流、生育確認

漁協には川の魚の増殖活動や放流といった資源を守り育てる義務があります。放流魚を養魚場から仕入れる漁協が大半ですが、親魚を採取し、採卵、孵化、仔魚、稚魚と育成し、放流を行う漁協もあります。その他にも発眼卵放流やアユや渓流魚の産卵場の整備など多岐に及びます。

秋田県イワナの里(養魚場)

養魚場から搬送されたヤマメの稚魚を放流

昔からの、いつもの場所にいつもの量の魚を放流するといった慣例放流の時代は終わりました。安価で元気の良い稚魚を仕入れて大量に放流するのではなく、適切かつ適正な放流をしていく方向性に変わり、その方針にそって放流を行っている漁協も増えてきました。具体的には、天然魚と養殖魚の交雑を避けるために、天然魚を保全するゾーン、釣り人に楽しんでもらうゾーンに分けて管理するための放流などです。また、単体の漁協の管区(釣り場)だけでなく、水系全体のことを考え、DNAレベルで放流する魚を限定して行われているところもあります。

放流後も、成育状況の把握や個体数確認のため、足しげく川に通って見守っています。

②漁場整備と漁場維持

投棄物の除撤去、支障木材等の伐採による漁場の整備、魚道の正常化、産卵場整備、環境調査

解禁まじかになると、釣り人に気持ちよく安全に釣りをしてもらうために、組合員総出で河川のゴミ拾いや草刈りを行います。また、川側の駐車場整備、入川するための昇降口を整備したり、手作りのハシゴをかけたり、仮設トイレを設置などを行います。

③釣り人へ情報発信

釣り場パンフレット制作、新聞メディアなどの広報、ホームページやSNSでの放流、釣果報告

これまでは、紙のパンフレットや新聞、雑誌などの釣り場情報の発信のみでした。しかし、最近はインターネットやSNSを積極に使って、発信していかなくてはいけない時代になりました。より多く、より詳細な情報を発信した分、それだけ釣り人に関心を持ってもらい、釣り場に来てもらえます。しかし、常駐の組合職員がいて、ITに詳しい方がいる漁協はほとんどありません。その中でも、組合員の中から見つけ出し、ボランティアでお願いして情報発信をしている所がほとんどです。

④遊漁証の販売

遊漁券販売と売上管理

遊漁券とは、都府県知事の認可を受けた各河川を管理する漁協(内水面漁業協同組合)が発行する釣り券です。遊漁券には、紙質やデザインなど漁協の個性が出ます。それは各漁協が自ら紙質や色、デザインを選定し地元の印刷業者にお願いするからです。サクラマスで有名な九頭竜川(中部漁協)では、冒頭の写真のように金色で特別な趣向を凝らしたものもあります。紙以外のものでも、全国には様々な形態様式の遊漁券があります。遊漁券はただ売っておしまいではなく、販売窓口を少しでも増やすために地元の販売店にも協力してもらっています。そのため、解禁前に一軒一軒まわり、紙の遊漁券を納入し、シーズン終了後には、一軒一軒まわり販売代金を回収し、集計するという「しごと」があります。岐阜県には、134の販売店と契約して遊漁券を売っている漁協もあります。

⑤監視と見回り

遊漁者の遊漁券の保持確認、遊漁者の安全確認、川の不具合の確認

漁協の大切な「しごと」として、監視とみまわり業務があります。監視業務とは、釣り人などが遊漁券無しで釣りをしていないかを監視することです。他にも、各漁協が設定した漁業規則に反した釣りの監視も行っています。例えば、「禁止区域での釣り行為」や「1日当たり採捕制限尾数を越えた行為」、「10cm未満の小型魚採捕禁止に違反する行為」などです。また危険な区域や増水などの危険な状況で川に入る人に注意を呼び掛けたりしています。その他、投棄物かないか、魚道が詰まっていないか、魚の遡上状況など、川の異変変化のチェックも行なっています。監視員は外部に委託する漁協もあるようですが、ほぼ漁協組合員が行います。

⑥イベント開催

釣り大会、子供向け釣り教室、地元祭りの焼き魚販売

漁協では、メーカー主催釣り大会の手伝いや、釣り教室を開催し、川の魅力をより多くの人に知ってもらう活動をしています。釣りイベントは、小さい子からより多くの人に、川と親しむ機会を提供したい思いによって開催されています。一部、自治体や企業からの協力はあるものの、イベント費用と人足はほぼ漁協が負担して行なっています。

⑦視察と勉強会

河川工事の見学、養魚場の視察、組合員への勉強会

仕入れ予定のある養魚場に行き、事前に発育状態の確認視察を行っています。またシーズンを通して、多くの勉強会が開かれています。単体の漁協だけの勉強会だけでなく、県の内水面漁連主催の勉強会では、著名な研究者や県の水産課担当者が、今年のアユの遡上傾向報告、カワウ対策報告、効果的な放流方法、漁場管理方法を演目に勉強会が行われています。

川の守り人

このように、稚魚の育成、放流、漁場整備、遊漁者の監視、河川保全、釣り教室、勉強会など様々な活動=「しごと」を通して、漁協は川を守っているのです。組合員向けの事務「しごと」は除き、今回大きく7つの「しごと」に分けましたが、この中には収まらない様々な「しごと」があります。内水面漁業と組合運営は年々厳しくなっている中で「これだけやっていれば良い」という訳にはいかないのが現状です。昨今、川を良くしたい、未来に残していきたいという思いから、様々なアイディアが生まれ、周りを巻きこみ、挑戦が行われています。そういった活動=「しごと」は、先進的で注目され、我々も積極的に紹介していきたいと考えています。しかしその背景には、やはり、漁協の絶え間ない、地道な「しごと」があって生まれることを忘れてはいけないのです。

次回予告

今回紹介した漁協の「しごと」には、お金がかかります。水研*1の中村智幸先生のレポートでは、全国の漁協の47.8%は赤字経営だそうです。その活動のための主な収入源は「遊漁券」収入ですが、その収入がどの「しごと」に配分され運営されているのか、次回、実例を用いて分かりやすく説明していきます。

次回:漁協とは#3漁協のお金のはなし

バックナンバー

漁協とは#1 漁協の組織構成

引用:石川 武彦「内水面漁協の現状と課題−内水面漁業振興法制定とウナギの資源保護・管理をめぐって ―」立法と調査,NO357,参議院事務局企画調整室編集,2014,

水研*1:国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所内水面研究センター

フィッシュパスは川を囲んで、釣り人漁協地域社会を結び、豊かさと賑わいを提供します。

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