キーツ岩田のA trip around the river 長野県木曽川水系(木曽川漁協)~炎天下の細流で垣間見た、ヤマトイワナの血筋~

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「暑い…」家に居てもそう呟くほど、今年の夏は暑い。そしてこの8月は、渓流釣り愛好家にとって厳しい時季でもあります。日本海側の山奥ではメジロアブが湧き、そうでない地域でも、水温上昇と渇水が魚をナーバスにさせます。
これはもう、可能な限り上に行くしかない。そう思い立ち、私は中央アルプスと御嶽山(おんたけさん)の間を流れる木曽川水系の源流へ向かいました。
私にとってまだ未開の地である木曽。そこには、私の憧れの魚である、ヤマトイワナが生息する支流もあるといいます。
果たして、ヤマトイワナのDNAが色濃く残る個体に出逢えるでしょうか。
実は、こんな時が来るかもしれない、と以前から目を付けていた支流があり、この日はそこへ向かうことに。その途中に遊漁券の販売店があり、まずはそこで遊漁券を購入。店内にはヤマトイワナの写真が飾ってありました。これを見て「この辺りの支流にもヤマトイワナは居るんですか?」と店内にいた漁協の方に聞くと、「居ないかも知らんね。最近はめっぽう、ニッコウイワナの生息域が広がってしまって。」
予想通り、そんなに簡単にはヤマトイワナには会えないようです。とは言え、今更計画を変える訳にもいかず、上流を詰めれば可能性はあると信じ、予定していた支流へ。
AM7:00、その支流へ入渓。

今回入った支流は、森林の影に水面の大部分を覆われ、少々不気味な印象でした。また、橋の上から覗いた感じでは渇水に見えましたが、実際に遡行すると、その水量に圧倒されました。そして更に驚くべきはその水温。朝一は13℃と、この時期の渓流としてはかなり低く、水面付近では吐く息が白くなる程でした。さすがは日本の屋根から滴る水源。
釣り上がって行くと、何匹か小型のニッコウイワナはキャッチ出来ましたが、中々ヤマトイワナの血が濃い個体は出現しません。また、ニッコウイワナでもその追いは慎重。それなりに釣り人は入っているのでしょう。

更に遡行し辿り着いたのは、いかにも多くのイワナたちが潜んでいそうな淵。ここでも最初の数投は魚からの反応はなし。しかし、必ず居ると信じ、底を這わすようにルアーを通すとバイト。

体長は26cm。ヒットルアーは45mmシンキングミノー。全体的に黒みがかった、その中にも目の覚めるほど鮮やかな朱点を持つ個体。白点はかなり薄く、ヤマトイワナの血はかなり濃いと言えるでしょう。

側線を中心に、強烈な赤みを有する朱点で彩られています。これが木曽の源流イワナ、といったところでしょうか。
この個体が釣れた辺りから、少しずつヤマトイワナの血が濃い個体が混ざり始めました。

こちらの個体も小柄ではありますが、白点は相当に薄く、血が濃いと思われます。
この釣りは狙った魚を確実に獲る、というようなものではなく、支流の選択も含め、くじ引きに近い気がします。光のあまり入らない支流は尚更、キャッチしてみない事にはヤマトイワナの血が入っているか否かは確認出来ません。

そして到達したこの日一番の大場所。流心の際のヨレに必ず着いていると信じ、一投目に全身全霊を込めてルアーをキャスト。
すると、瀬に差し掛かる直前でバイト。手前の枝に魚が絡まり焦りましたが何とかランディング。

サイズは28cm。ヒットルアーは45mmシンキングミノー。白点がほぼ見当たらない、純血のヤマトイワナだ、と言われても信じてしまう程のクオリティ。朱点も驚くほど鮮やかでした。その光沢は正に滑り(ぬめり)感の極み。
「まだ出るか?」すかさず同じ淵に再びルアーをキャスト。すると今度は同サイズ程のニッコウイワナがヒット。

仲良くツーショット。こうして並べて見ると、やはりヤマトイワナの艶めかしさが目立ちます。
ひとまずこの日はここまでで納竿とし、帰路につきました。
後日。先日遊漁券を購入した際に漁協の方に聞いた支流がどうしても気になり、再び木曽のエリアへ。すると、一日歩き倒した末に、遂に尺を超えるサイズの個体をキャッチすることが叶いました。

岩盤が抉れることで形成された、穴の中に潜んでいた個体。この独特の形状のパーマークが、ヤマトイワナの血が入っていることを物語っています。
ヤマトイワナは一般的にはニッコウイワナよりも成長スピードが遅いと言われていますが、日帰りできるエリアにも確実に大型が潜んでいることを、この一匹が教えてくれました。
木曽のヤマトイワナ。そのワードに憧れを抱いていたものの、今まで一度も踏み入れたことの無かった木曽の源流。今回の開拓釣行で、ヤマトイワナの釣りが何たるものか、理解できた気がします。個体数は当然少なく、それゆえ狙う釣り人も多い。となれば、一筋縄ではいかないのは明白。それでもまだ見ぬヤマトイワナたちと冷を求め、来シーズンもこの時期は、この木曽エリアを含め、日本アルプスに入り浸ることになるでしょう。その時まで、また地図と睨めっこしようと思います。
ライター自己紹介
アングラー:キーツ 岩田
秋田県出身、愛知県在住。小学校6年生の頃にルアーフィッシングと出会う。それ以降、主に淡水に潜むフィッシュ・イーターを求め日本中を駆け回る。
ロンジンLONGIN-ルアーブランド「ロンジン」公式サイトのフィールドテスター、冒険用品冒険用品「冒険用品」 (jetslow4wear.com)のアンバサダーも務める。
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