キーツ岩田のA trip around the river 海外出張編 ボルンバ湖(オーストラリア、クイーンズランド州)~豪州が生んだ淡水の宝石、サザンサラトガを求めて~

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「遂に待ちわびたこの時が…」
2024年1月上旬。私は雲の上、オーストラリアのブリスベン空港行きの飛行機の中にいました。目的は幼少期からの憧れだった、ある魚を狙うためです。その魚は、サザンサラトガ。オーストラリア大陸東海岸側の淡水域に潜む、アロワナの一種です。サザンサラトガのルーツはフィッツロイ川と言われていますが、現在はスポーツフィッシングの一環としてクイーンズランド州各地の止水域に移入され、繁殖が進んでいます。今回はその中でも最も有名なボルンバ湖というダム湖にて、現地ガイドを頼りにサザンサラトガを狙うことにしました。
そもそもなぜ、それ程までにアロワナを釣りたいのか。その理由は4年前のアマゾン川釣行に遡ります。その際のメインターゲットはピーコックバスだったのですが、一度だけ、ブラックアロワナを掛けた時がありました。しかし、掛かるや否や、ジャンプ一回で針が外れてしまったのです。私にとってアロワナという魚は、小学生の頃からの憧れでした。爬虫類の様な顔、大きな鱗、流麗なフォルムを併せ持つその魚を、いつか自分で釣り上げ間近で見たい、触れたいとかねてより思い続けていました。それだけに、あまりに短いファイトに落胆の色を隠せませんでした。
「どうにかして、アロワナを選択的に釣る方法はないか?」
これを調べていくうちに、オーストラリアにはサラトガというアロワナの一種が生息しており、場所と時季によっては選択的に釣ることが可能ということを知りました。そういった経緯があり、今回はオーストラリアへ向かったというわけです。
ブリスベン空港に到着後、予想外に税関に足止めされましたが、なんとか入国。そこからシャトルバスを利用して更に北上し、今回のガイドが住んでいるサンシャインコーストへ向かいました。
ホテルに着き、食料調達等一通りの準備を終えた後、ガイドが夫婦で経営しているフライショップへ。

こちらはガイドの奥さんのデボラー・プラッツさん。まずはここへ来た経緯を説明。サラトガ釣りの近況は?と尋ねると、状況は悪くないそう。また、大型のサラトガを釣るならどういったルアーが良いか等のアドバイスも頂き、憧れの魚捕獲へ向けて、更に胸が高鳴りました。
釣行初日。ホテルの前でガイドに拾ってもらい、そのままボルンバ湖へ。

こちらが今回のガイド、ギャヴィン・プラッツさん。ブリスベンのフィッシングシーンを牽引してきたベテランガイドです。

1時間強ほどでボルンバ湖へ到着。おびただしい数のセミたちの合唱で迎えられました。聞くところによると、セミもサラトガの重要な栄養源なのだとか。
ここで釣りのレギュレーションについて説明すると、ダム湖で釣りをするには、クイーンズランド州が発行するパーミットと呼ばれるライセンスを事前にインターネットで購入する必要があります。

これが発行されたパーミット。今回は一週間で申し込みましたが、1月分、1年分でも購入可能です。釣りをする際は、これをいつでも提示できるようにしておかなければなりません。
道具をセッティングし、ボートに乗り込み遂に出船。

湖の様相としては、このように割と沖まで沢山の立ち木が存在しています。
この立ち木群を攻めるのも手ですが、ガイドの判断で、今回は随所に存在する小さなワンド(入り江)を入口から丁寧に攻めるスタイルを取りました。初日はダム左岸側のワンドを打っていくことに。

ボルンバ湖では日本では見られない鳥類も沢山見られました。中でも一際目を引いたのはこのルリミツユビカワセミ。魚を獲る動きは日本のカワセミと全く同じですが、より濃い青色の羽を身に纏っています。ここでの英名は”King Fisher”。
サラトガからのファーストコンタクトは開始早々でした。ワンドの入口、立ち木と岸際の間にペンシルベイトを投げ、数回竿先で動きを与えると、何かが唐突にそれを水中に引きずり込みました。

ファイトをしていると、魚体が完全に宙に舞うジャンプ。間違いなくサザンサラトガです。その後何とかボートの際まで寄せ、慎重にやり取りしますが、最終的に針が外れてしまいました。これぞサラトガの釣り。サラトガを始め、アロワナの類は上顎の内側がほぼ骨で出来ており、釣り針が掛かりづらくなっています。従って下顎に掛かるのを祈るしかないのですが、それでもジャンプを伴う激しいファイトで外れてしまう場合があります。気を取り直して次のポイントへ。
再び出現したワンドを丁寧に打っていきます。ペンシルベイトを岸際に投げ、ソフトドリンクを飲みながら暫く放置、その後竿先で数回動きを与えるとヒット。

これが古代魚サザンサラトガ。小柄ではありますが、大きな鱗、長い胸鰭、そして一色では表現できない色合いは、この魚独特のものです。
AM10:00位までは、一つのワンドにつき必ず1回は魚の反応がある状況でした。
次のワンドでは最奥にペンシルベイトを投げ、一度だけ動きを与えるとヒット。

こちらも小型ながら、美しい個体。初日は午後になると反応がパッタリと止み、結局この2本でストップフィッシングとなりました。
釣行二日目。この日は初日と反対側の、ダム右岸側を攻める予定でしたが、釣り人の数が多く断念。まずは初日と同様、左岸側を打って行くことに。午前中にはそれなりに魚からの反応があり、小型のサラトガを2本キャッチ。しかし、なかなかアベレージサイズ以上の魚にお目にかかれません。ガイド曰く、ここ数日で若干水温が下がったので、その影響はあるかもとのこと。
そしてPM1:00を回る頃、今までで最も雰囲気のある、横に伸びる形のワンドに差し掛かりました。それと同時に、まとまった雨も降り出しました。水温も先ほど居たエリアより高いようです。
「時は熟した」 釣り人としての血が騒ぐこの感覚。何かを察し、自然と集中力が高まります。ワンド内でアベレージサイズ以上の個体のライズ(魚が体を水面に出す行為)も見え始めました。ひとまずセオリー通り、ワンドの入口から少しずつ内側を打っていきます。その中で目に留まった、立ち木群の中にできたポケット(空間)。そこへ正確にペンシルベイトを投げ、一度だけ動きを与えるとひったくる様なバイト。


やっとキャッチできた、アベレージサイズ(50cmクラス)のサザンサラトガ。これぐらいのサイズになると体高はお尻まであり、アロワナらしい貫禄が出てきます。

この世のモノとは思えないほど美しい、大きな鱗。シルバーベースながらも、角度により碧く光り、その中に鮮やかな朱点が咲く。正にボルンバ湖の宝石です。

顔の造形にも目を奪われました。貝殻のような鰓の模様、やたらと上を向いた口、そしてアロワナに必ず存在する下顎の2本のヒゲ。日本に生息する魚類とは異質な雰囲気を醸し出しています。
この日はこの個体を最後にストップフィッシング。夜はガイド夫妻の家に招待頂き、皆で夕食。

メインディッシュは現地でポピュラーなスパニッシュマッケレル(日本名:ヨコシマサワラ)のフライを使ったタコス。日本のサワラと異なり脂は少なく淡泊な身。触感もフワフワで絶品でした。素晴らしい出会いに再び感謝。
そして最終日。この日は前日調子の良かったエリアから攻めることに。例によって点在するワンドを打っていきます。ルアーはポッパーを選択。すると、幸先よくアベレージサイズをキャッチ。


ワンドの最奥に着いていました。この個体を撮影している時が、太陽光が最も強く、最高の発色の状態でサラトガの写真をカメラに収めることができました。

古代の鱗。その一枚一枚が正に芸術。凹凸がまるで葉脈のように枝分かれしています。とても一色では言い表せない、複雑な色合い。そして背面に移るとともに銀色は突如として消え、大理石を彷彿とさせる茶褐色が広がります。こんなものを実際に見て、心が震えない人などいるでしょうか。
その後、岩盤帯の際にてもう一本アベレージサイズをキャッチ。そして差し掛かった、ワンドと立ち木が隣接しているポイント。ここが今回の旅で最後のポイントです。
やはり複雑な構造のポイントだからか、生命感は今までで一番強く、大型のサラトガのライズも見られます。
ここでも例によってセオリー通り、ワンドの入口から丁寧に攻めていきます。すると、ワンドの入口から5mほど沖の位置にルアーが差し掛かった時、唐突に水しぶきが上がり、ルアーが水中へと消えました。「Big one!」ガイドも興奮しているようです。ジャンプこそありませんが粘り強いファイトで、中々魚体を水面に出させることが出来ません。こちらも粘って粘って、遂にランディング。

今旅最大の、60cmはあろうかという個体。鱗や鰭の欠けがほぼない、最高のコンディションでした。どちらかというと美しさ重視の私としては十分なサイズ。間違いなく、私の人生におけるメモリアルフィッシュです。

その姿は正に「龍魚」。アロワナが世界的にもそう言われている理由が分かった気がします。神秘的かつ畏怖の念をも抱かせるその姿を直接見て、そして触れることが出来、私はこの上ない充実感に満たされていました。これは夢なんじゃないか、と思った程です。
今回、最終的には自分の中で満足できるサイズのサザンサラトガに出会うことが出来ました。しかし、ここボルンバ湖には更に巨大な、80cmクラスのサラトガが潜むといいます。
次に来るのはいつの日か、まだ想像もできませんが、その夢のサイズのサラトガを狙いに、必ずまたこの地へ戻って来ようと思います。
ありがとう、美しきボルンバ湖の宝石、そして偉大なオーストラリアの大自然、また会おう。
ライター自己紹介
アングラー:キーツ 岩田
秋田県出身、愛知県在住。小学校6年生の頃にルアーフィッシングと出会う。それ以降、主に淡水に潜むフィッシュ・イーターを求め日本中を駆け回る。
ロンジンLONGIN-ルアーブランド「ロンジン」公式サイト、Avail Avail|Fishing Tools“Avail”オンラインショップ
フィールドテスター、冒険用品冒険用品「冒険用品」 (jetslow4wear.com)のアンバサダーも務める。
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