キーツ岩田のA trip around the river 秋田県雄物川・玉川(仙北中央漁協)~故郷の大河を遡る鱒を追う~

2024/05/14

釣行レポート

「故郷の川でサクラマスを獲る」これは、私が人生において成し遂げたいことの一つでした。

秋田県雄物川。県内に無数の支流・源流を有し、横手盆地・秋田平野を流れ最終的に県中央部で日本海へ注ぐ大河です。私のみならず、私のよく知る故郷の友人たちが住む地域の水は全て、この雄物川へ集約され、海へ還るのです。

私は幼少期からこの雄物川を見て育ちましたが、サクラマスが遡上する河川と知ってはいたものの、実際にサクラマスを釣るために竿を振ったことはありませんでした。そこで、今回はゴールデンウィークの長期休暇を利用し、まだ見ぬ故郷の鱒に出逢うべく雄物川・玉川を攻略することにしました。

今回も心震わす出逢いは待っているでしょうか。

釣行初日

まずは遊漁券を購入するのと、状況を把握するため、私が小学生~高校生時代に行きつけだった上州屋大曲店さんへ。

遊漁券は一応年券を購入。この遊漁券があれば、雄物川本流のみならず、支流である玉川と岩見川でもサクラマスを狙うことが出来ます。

店員さんに状況を聞くと、悪くはなく、一日のうちに必ず一本は持ち込みがあるとのこと。ただし、現状はそのほとんどが雄物川本流だそう。

情報を得た後、まずは雄物川本流ではなく、玉川の気になっているポイントへ。状況を考えれば雄物川本流へ真っ先に向かうのが良いのは分かっていたのですが、個人的にメリハリのある瀬が絡むポイントで魚を掛けたいと考えていたためです。

まずエントリーしたのは、河原までクルマで入っていく必要があるポイント。

瀬の開きから左岸側にテトラ帯が続く、如何にも魚が付きそうなポイントです。

既に先行者が二人いたので話を聞くと、玉川には何年も通われている方々のようです。

「今日は渋いけど、過去には一日3本という日もあったよ。」

状況によりけりですが、やはり玉川も十分に可能性はありそうです。

その後、もう一箇所玉川の別のポイントを下見し、次は雄物川と玉川との合流点へ。

玉川の筋が、想像以上に押しが強い流れとなっていました。引き抵抗の強いルアーでは太刀打ちできないレベルの流れです。

ここでも先行者がいて、話を聞くと、足元にはストリンガーで繋がれたサクラマスが!

「2時間前位に釣れたよ。雄物川の筋が濁ってるでしょ?それと澄んでる玉川の筋の境目くらいで掛かったよ。」

こんなにすぐにサクラマスにお目にかかれるとは。合流点なら意外とイージーなのだろうか?と一瞬思いましたが、それ以降は周りも釣れていないようで、やはりタイミングも良くなければ魚には会えないようです。

この日はその後、合流点からより下流にあるポイントにエントリーし暫く竿を振りましたが、サクラマスからの反応はありませんでした。

釣行2日目

この日は、昨日実際にサクラマスを目撃したこともあり、合流点から開始しました。 朝一から竿を振っていると、上流側で竿を振っていた釣り人は1時間ほどで移動、すぐに他の釣り人がそこへ入ってきました。ちょうど太陽光が雲間から射してきたタイミング。するとなんと一投目でサクラマスをキャッチ。これにはさすがに私も唖然。後から知ったのですが、この方、この界隈で最もサクラマスを多く釣る方だそうです。それでも、朝一でそのポイントで釣れたのは初めてだったとか。やはり今まで通い詰めたからこその釣果という事でしょうか。

それを見て私も負けじと竿を振り続けますが、何も起きず。次は玉川の周りきれていないポイントへ。

私が最も得意とする、瀬の頭にかけて駆け上がりとなっているポイント。九頭竜川水系でのサクラマス釣りや、犀川でのニジマス釣りでも最も魚を掛けているポイントです。

必ず魚は着いているはず。そう自分に言い聞かせ、竿を振ります。メソッドとしては、対岸へ真っ直ぐルアーを投げ、時折竿先を動かし誘いを掛けつつ、リーリングはほぼせずにルアーを漂わせ流すイメージ。経験上、反応があるとすればU字効果(ルアーの軌道がU字の頂点に来た時に魚が反応する事が多いためこう呼ばれる)、あるいはルアーを流し切ってルアーが自分の直下流に来たところと考え、その二点では特に集中力を高めます。しかし、何度流しても無反応。

「やはりここもダメか。」

半ば諦めモードで、流し切って直下流に来たルアーを誘いを掛けながら回収していると、「ゴン」と痛烈なアタリ。そして直後からドラグが鳴り響き、ラインが引き出されました。瞬時に追いアワセを試みますが、途端に重量感が無くなりました。

「やられた。」

魚から針が外れてしまったのです。針は全く曲がっていなかったため、掛かりどころが悪かったのでしょう。岸際に着いていた個体の可能性が高いですが、居ると信じていたポイントでせっかく掛けた魚であっため、落胆の色は隠せませんでした。

その後、同じような駆け上がりのポイントを周りますが無反応。悔しさを胸に次の日へ臨みました。

釣行3日目

この日も朝一は合流へ。しかし数時間粘るも魚からの反応は得られず。その後玉川へ移動し、昨日反応の有ったポイントを左岸側(前日は右岸側からエントリー)から攻めるとU字効果でヒットがありましたが正体は外道のニゴイ。結局他のポイントも数か所周るも本命からの反応は有りませんでした。

落胆していると、同じエリアに通っている知り合いから連絡が。どうやらその日の朝方、本流のとあるポイントでサクラマスを2本掛けたとのこと。

「これは本流に徹した方が吉か?」

私の直感がそう囁き始めました。現金ですが、翌日はその情報を頼りに、そのポイント近辺へエントリーすることに。

釣行4日目

昨日の情報を元に、本流のとあるポイントへエントリー。

メリハリのある瀬ではないものの、エントリーした岸側に流心が寄っており、地形の変化で緩流帯が形成されている、如何にも魚が着きそうなポイントです。

「本流に絞ろう」

私の腹が決まった瞬間でした。少し竿を振った後、近くのポイントにいる例の知人のもとへ。「どうです?反応あります?」と聞くと「ワンバイトあったよ、バラシちゃったけど。」とのこと。聞くところによると、ちょうど朝日が雲間から射してきたタイミングで、メッキ系カラーのミノーを使い、竿先を細かく動かし誘っているとヒットしたとのこと。

「確か2日目に上流で掛けていた人も、ちょうど陽が射してきたタイミングだったような。」

少なくとも、朝は太陽光がカギなのか?僅かながら、法則性が見えてきた気がしました。

この日はその後、ダメ元で更に本流の下流域にあるテトラ帯を何箇所か周りましたが完全無。明日に備え、作戦を練るため早めに上がりました。

釣行5日目

この日はこれまでのデータを元に、太陽光が射すタイミングで、知人が数日前に掛けたポイントに入る計画を立てました。予報では、AM10:00~11:00に晴れ間が出るとのことでしたが、実際の日の出はAM4:30頃であったため、そこで、AM7:00にはポイントに入れるよう、クルマを近くに停めて待機しました。

先行者が釣りを止めたのを確認後、エントリー。まだ太陽光が僅かに出ている状態です。

まずは2日目に玉川で反応があった、フローティングタイプのシャッドプラグを選択。丁寧に探りますが、魚からの反応は無し。

次に、シンキングタイプのミノーを選択。このタイミングで、太陽光がバッチリと水面に当たり始めました。しかし、数投するも反応はありません。とりあえず惰性でルアーを投げていると、ちょうど姫神山(ひめがみやま)の方へ大型の鳥が飛んでいくのが見えました。

「トンビ?いや、翼の裏が白いし、ホバリングしてたからミサゴだなあ。」

そんな事を考えながら、既に直下流に来ているルアーに雑に動きを与えていると、

「ズシン」

唐突な魚信に慌てる私。ただ、ファイトの序盤こそドラグは鳴り響きましたが、その後暴れる様子がありません。まさかまたニゴイか?疑心暗鬼になりながらも手元まで寄せると、それは紛うことなきサクラマス。そして手元まで来てラインのテンションが緩んだ瞬間、縦横無尽に暴れ始めました。しかし、針は下顎と上顎の両方に掛かっているのを確認できたため、暫く水面近くで空気に晒し弱らせ、遂にランディング。

これが故郷の鱒「雄物鱒」。想像以上に長かったその道のり。達成感というより、これで帰れるという解放感の方が勝っていた気がします。サイズは56cm。

やはりこの、海を下った鱒特有の精悍な顔つきは、見るたびに畏敬の念を抱いてしまいます。

サクラマスを釣ると、必ず凝視してしまう頭部。シルバーが突如として消え、大理石を彷彿させる深みのあるブラウンに変わります。神が与えた、正に自然の神秘です。

バックに姫神山。私の母校である大曲高等学校の校歌にも出てくる山です。これほど感慨深いものはないです。

正直、今回雄物川に来る前までは、秋田のポテンシャルに過度に期待し過ぎていた所は有ったと思います。相手は自然であり、あのサクラマス。一筋縄ではいかない事は、どのフィールドでも同じだと痛感しました。

同時に、私の師匠がよく言う、「サクラマス釣りは人生の縮図」というのが思い出されました。釣りに限らず、早くに結果を出す人間もいれば、遅咲きの人間もいる。仮に後者でも、そこへ辿り着くまでのプロセスを考え抜いた人間は、より深みのある人間になれると信じています。

そして、現場で会った漁協の組合員の方の言葉がこの釣りの全てを代弁してくれていた気がします。

「サクラマスはね、釣れないから面白いんだよ。」

それを聞いて、すぐに頷けなかった私には、まだそれを面白いと思えるほどの経験と心の余裕がないのかも知れません。

しかし、その領域に達するまでの一歩が、間違いなく今回の釣行であり、幸運にもキャッチできた一本の雄物鱒だったのだと思います。

さらば偉大なる雄物川、また来年、再会しよう。

ライター自己紹介

アングラー:キーツ 岩田 
秋田県出身、愛知県在住。小学校6年生の頃にルアーフィッシングと出会う。それ以降、主に淡水に潜むフィッシュ・イーターを求め日本中を駆け回る。

ロンジンLONGIN-ルアーブランド「ロンジン」公式サイト、Avail Avail|Fishing Tools“Avail”オンラインショップ

フィールドテスター、冒険用品冒険用品「冒険用品」 (jetslow4wear.com)のアンバサダーも務める。

Facebook
https://m.facebook.com/keats.iwata

Instagram
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