釣行の狙い目はヤマメ!漁協ではサクラマスの増殖も!!〜大畑町(おおはたまち)漁業協同組合〜

目次
Toggle大畑町漁業協同組合
下北半島は、本州最北端の半島である。
青森県の北東部にマサカリ状に突出し、野辺地(のへじ)・小川原湖(おがわらこ)以北が半島部になっている(狭義では下北郡のみを指す場合もある)。
東は太平洋、西は平舘海峡(たいらだてかいきょう)を挟んで、青森県のもう一つの大きな半島である津軽半島に対峙している。
半島の最北端は、クロマグロ漁で有名な大間町の大間崎(おおまざき)で、津軽海峡を間に約17.5kmの距離を隔てて北海道の汐首岬(しおくびみさき)と向かい合う。
下北半島は、天然自然に恵まれた風光明媚な景勝地としても知られ、1968年(昭和43年)7月22日には、「下北半島国定公園」に指定された。
大畑川(おおはたがわ)は、その下北半島の北側中央部を流れる2級河川。
荒沢山(標高672m)と朝比奈岳(標高874m)を結ぶ稜線に源を発し、大小の支流を取り込みながら急峻なV字谷を形成する山間地を北流したあと流路を東に変え、さらに下流部では北東に流れてむつ市大畑町中心部を貫流して津軽海峡へと注ぐ。その流路延長は31.6km、流域面積は169km2。

【大畑川河口、津軽海峡へと注ぐ】
この大畑川の大きな特徴は、自然景観に優れ、観光地としても有名であること。
町の中心部から10kmほど上流へ上っていくと、薬研(やげん)に着き、さらに2kmほど行くと奥薬研(おくやげん)に至る。
この辺りは渓谷が発達し、自然の純度が高い優れた景観美が川に沿って広がる。
何と言っても青森ヒバの針葉樹とブナの広葉樹が混在する植生が魅力で、ここならではの森林の醍醐味を味わえる。
特に秋の紅葉が素晴らしい。カエデ類が多いことから赤が豊富な彩りが見事。
奥薬研は、渓谷の温泉地でもあり、温泉ファンには秘湯として人気がある。
ちなみに薬研の名の由来は、漢方医が薬草をすりつぶす舟形の薬研(やげん)台に、温泉の湧出(ゆうしゅつ)口の形がよく似ていることからついたとされている。

【奥薬研の渓谷、カエデ類が植生し紅葉が美しい】
大畑川の漁場管理は、大畑町漁業協同組合(以下「大畑町漁協」)が担っていて、海水面はもとより、大畑川の本支流すべての漁業権を有している。
大畑川は、釣行でも魅力がある川で、狙い目はヤマメである。
大畑町漁協で内水面事業を担当している泉友樹さん(39)は「大畑川の種苗放流の主流はヤマメ。今年は5月下旬に5万尾の稚魚を放流しました」と語る。
釣りのスポットとしては、中流部の数ある支流での魚影が濃く、ヤマメを中心にイワナも期待できる。ただし、泉さんによると、支流はどうしても険しい箇所が多いほか、熊も出没するので、「熊には常に注意を」と呼びかけている。
5月中旬には、アユの稚魚も約1万3千尾放流していることから、本流の下流から中流部には、7月1日の解禁とともにアユ釣りファンもやって来る。
遊漁券は日券が400円、年券が3,000円となっている。

【本流へは大小の支流が流れ込む。支流は魚影が濃い】
大畑川の魚種の特徴としては、最上流部にスギノコが生息していることだ。
スギノコとは、ヤマメの希少種。通常、ヤマメはイワナより下流部に生息するが、大畑川ではイワナより上流部に生息していて、その場所にとどまってスギノコの個体群として繁殖している。
このため、スギノコが生育する大畑川の赤滝(あかたき)から上の最上流部は、この希少種を守ることを目的に、保護水面に指定されていて、釣りをはじめ一切の捕獲行為が禁止されている。
大畑町漁協では、青森県産業技術センター内水面研究所(十和田市)からスギノコの受精卵を提供してもらい、孵化させて、今年も1万5千尾の稚魚を保護水面に放流、資源保護に努めている。
ヤマメに関して大畑町漁協では、もう一つの増殖事業がある。
それはサクラマスの幼魚放流だ。
ヤマメとサクラマスは同種なのだが、陸封型がヤマメ、降海型がサクラマスである。
サクラマスは、孵化してから1年半ぐらいで降海し、海域のわりと沿岸に近い沖合を回遊して、さらに1年を海域で過ごして、40~50cmに成長して母川に回帰するそうだ。
4月から6月の桜の開花時期に遡上するので、その名がついたとされているが、産卵期の婚姻色が由来となっているという説もある。
同漁協では、9月上旬から下旬にかけて、スモルト化した幼魚を放流しており、昨年は3万尾を放流した。
スモルト化とは、斑紋が消え体色が銀色になった幼魚で、その頃に放流すると回帰率が高まるとされている。

「サクラマスは、成魚になるのにおよそ3年。サケの4~5年に比べると、成長がかなり早い。簡単ではないが、海水面漁業のことを考えても、サクラマスの増殖には、今後も力を入れていきたい。ですからコストダウンのためにもヤマメに関しては、できれば自家生産まで持っていきたい」
漁協で増殖を担当する泉さんは、強調する。

【大畑川中流部の渓谷】
併せてサケのふ化事業についても、泉さんは10年以上の経験を有している。
「組合職員採用の募集の際に、ふ化事業も担うということだったので、地域社会に貢献できるのではないかと思い応募しました」
職員になってからは、前任者のもとで経験を積み、今ではサケふ化事業も一手に担う泉さん。
「大畑川でのサケの遡上数は3、4年前から特にダウンしている。それでも海での水揚げがあるので、ふ化事業は継続してほしいという漁師さんたちからの意向があります」
泉さんは、少しでもサケの回帰率を高めようと、稚魚の大型化や稚魚の海中飼育など、新しい取り組みにも挑戦している。
大畑川でのサケ・マス人工ふ化放流事業が始まったのは、60年ほど前の昭和40年代だという。ちなみに青森県内で同事業が始まったのは、今から122年前の明治34年(1901年)である。
取り巻く環境は厳しいが、長きにわたって先人が築いてきた河川における増殖技術・文化を絶やさないためにも、泉さんのような若き後継者の存在は、頼もしい。
周辺の主な観光スポット・施設
【奥薬研修景公園】
大畑川の上流約12kmに整備された公園。青森ヒバ材で建てられたレストハウスがあり、駐車場には天然温泉かけながしの足湯のほか、レストハウスの奥には男女別の露天風呂もある。


【レストハウスの駐車場にある温泉足湯】
ここから徒歩3分の場所にあるのが、「元祖かっぱの湯」。そこには伝説が残っていて、今から千百年余の昔、円仁慈覚大師が恐山を開山した後、この地に向かい、大怪我をしたところに大きなフキの葉をかぶったカッパが現れ、湯に連れていき傷を癒やしたとされ、以来「かっぱの湯」と名付けられたそうだ。
この伝説にちなみ、レストハウスの駐車場に隣接して、フキの葉を持ったかっぱのコミカルなモニュメントが建っていて、近づくとセンサーが反応して噴水が吹き出す仕掛けがされている。

【フキの葉を持ったかっぱのモニュメント】
レストハウス付近から下流4kmにわたって遊歩道がついており、起伏がほとんどないので軽装で、渓流の景観と森林浴が楽しめる。
レストハウスにはレストラン、お土産コーナもある。
(「奥薬研修景公園レストハウス」ホームページ:https://oku-yagen.jp/)
関連記事
漁協探訪シリーズ〈青森県〉
「金アユ」釣りの名川、太公望は県内外から 青森編#06〜鯵ヶ沢町漁業協同組合 赤石支所〜
釣行とともに出湯(いでゆ)巡りも楽しめる河川環境 青森編#05〜浅瀬石川漁業協同組合〜
“ご当地サーモン”の試験養殖にチャレンジ! 青森編#04〜野辺地川漁業協同組合〜
津軽半島・三厩湾へと注ぐ2級河川 青森編#03〜今別町内水面漁業協同組合〜
放流に子どもや女性参加で川への親しみ・興味を促す 青森編#02〜馬渕川漁業協同組合〜
母なる川よ、よみがえれ! 川の文化見直す数々のアイディア!! 青森編#01〜岩木川漁業協同組合〜
漁協探訪シリーズ〈長野県〉
漁協探訪シリーズ〈新潟県〉
越後の川が紡ぐヒトとサカナの物語Vol.6 新潟県 中魚沼漁業協同組合
越後の川が紡ぐヒトとサカナの物語Vol.5 新潟県 能生内水面漁業協同組合
越後の川が紡ぐヒトとサカナの物語Vol.4 新潟県 関川水系漁業協同組合
「越後の川が紡ぐヒトとサカナの物語Vol.3 新潟県 加治川漁業協同組合」
「越後の川が紡ぐヒトとサカナの物語Vol.2」新潟県 阿賀野川漁業協同組合
「越後の川が紡ぐヒトとサカナの物語」新潟県 魚沼漁業協同組合
漁協探訪シリーズ〈大分県〉
「雨の少ないまち」の挑戦〜大分プロジェクト#07〜駅館川漁業協同組合
川とともに暮らす「まち」〜臼杵河川漁協〜大分プロジェクト#06〜
日本で唯一!チョン掛け体験施設〜大分プロジェクト#05〜番匠川漁業協同組合
漁協探訪シリーズ〈鹿児島県〉
NEW PARTNERSHIP新提携
ご利用いただける河川が増えました!