最近注目の「キャスティングアユルアー」の推奨河川〜蟹田川漁業協同組合〜

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Toggle蟹田川(かにたがわ)漁業協同組合
蟹田川(かにたがわ)は、津軽半島の脊梁部(せきりょうぶ)をほぼ南北に縦走する津軽山地に源を発し、半島を東南に流れて、外ヶ浜町(そとがはままち)蟹田で陸奥湾に注ぐ。流路延長は約15.7kmの2級河川だが、高石股沢、清水股沢、南股沢などの支流が発達していて、その数は10本を下らない。
魚種で特徴的なのは、ハゼ科のシロウオが春に遡上すること。河口には捕獲用の梁(やな)が設置され、風物詩にもなっている。
「しろうお祭り」というイベントも行われ、期間限定の食堂では〈おどり食い〉や〈卵とじ〉といった料理が提供される。
本来この祭りは、蟹田名産の陸奥湾で捕れるトゲクリガニとともに「蟹としろうお祭り」となるのだが、今年2024年は、トゲクリガニは資源保護のために休漁となり、シロウオだけの開催となった。
ちなみに、このトゲクリガニは、毛ガニと同じクリガニ科の仲間であり、味も毛ガニによく似ている。ミソも身も旨味に優れ、地元では観桜の時期と旬が重なるので〈花見ガニ〉と呼ばれたりもする。

シロウオ漁は、蟹田川漁業協同組合(以下「蟹田川漁協」)の「しろうお部会」のメンバーが行なっている。同部会は、戦後の同組合創立とともに設けられたようで、伝統的漁法を長きにわたって継承してきた。
「今、梁の数は3か所だけだが、かつては河口に10か所も設けられていたものだ」
と、振り返るのは、蟹田川漁協組合長の村上亮(66)さんだ。蟹田地区で生まれ育ち、今も蟹田川のそばに暮らしている。組合長になって丸6年、38人の組合員を率いている。
同漁協では、毎年5月にアユの稚魚、6月にイワナ、ヤマメの稚魚をそれぞれ8000匹ずつ放流している。ヤマメの稚魚放流には地元保育所の園児が、イワナの稚魚放流には地元小学校の4年生が参加するそうだ。
産卵床づくりも活動の一環で、4月はウグイ、9~10月はイワナの産卵床を各支流につくり、魚の繁殖を促している。
このようなことから蟹田川には、上流からイワナ、ヤマメ、アユ、ウグイなどが生息する。
中でもイワナ、ヤマメは、本流よりむしろ数ある支流の方が魚影は濃いという。

蟹田川を幼い頃からの遊び場とする村上さんは、夏場には「今も3日に1度は川に入る」という。今でも釣り好きで、狙うのは5月から6月にかけて遡上するサクラマスだという。
体長50~60cmのサクラマスは釣り応えがあり、特に60cm超えの大物は「3回ジャンプする」と言い、ベテランの村上さんでも「心臓がドキドキする緊張感」があって、すこぶるエキサイティングだそうだ。

アユ釣りのキャスティングアユルアーに関連して最近、各メーカーの呼び名は異なるが、例えば「アユイング」という言葉が聞かれるようになった。これは、アユのルアー釣りのことなのだが、釣具メーカーのDAIWAが、その名称をつけ、最新技術を使った専用製品を世に送り出し、盛り上がりを見せている。
キャスティングアユルアーの特徴は、日本古来のアユの釣り方である「友釣り」と比べて語られることが多い。
「友釣り」は、アユの縄張り意識の習性を利用して、掛け針をつけたアユ(おとりアユ)を泳がせて捕らえる釣り方。
しかし、キャスティングアユルアーは、ルアーなのでおとりアユがいらず、竿も短いリールなので非常に扱いやすい。また、友釣りのような難しい仕掛けの技術も要求されない。
このようにキャスティングアユルアーは極めて簡単で手軽、しかも費用もあまりかからないことから、初心者でもチャレンジしやすく、大いに楽しめる。そこが最近注目されている最大の理由のようだ。
蟹田川は、「アユイング」の推奨河川となっている。遊漁券(日券400円、年券3000円)を購入すれば、本流・支流すべての川で許可されている。
村上さんによると、一昨年夏の豪雨で、蟹田川も「あちこちで川の相が変わる」被害に遭ったが、その後は改修工事が進み、「徐々に回復に向かっている」そうだ。
筆者も今年(2024年)5月初旬、川を訪ねてみたところ、流木などはほぼ撤去されていた。中流域では、フライフィッシングを楽しむ釣り人にも遭遇したことから、川幅があまり広くない中流から上流にかけては、キャスティングアユルアーに適しているものと推察できた。

ほかに青森県内における「アユイング」推奨河川は今別川、野辺地川、老部川、小老部川、大畑川、中村川となっている。
「アユイング」ついては、DAIWAの専用ホームページへ。
(https://www.daiwa-product.com/special/ayuing#:~:tex)
◇周辺の主な観光スポット・施設
【大平山元(おおだいやまもと)遺跡展示施設「むーもん館」】

大平山元遺跡は、2021年7月27日に世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」を構成する遺跡の一つであり、国史跡にも指定されている。
遺跡は外ヶ浜町蟹田大平山元にあり、石器の材料となった岩石・珪質頁岩(けいしつけつがん)が採取できた蟹田川の近くに位置している。
この遺跡からは、貴重な発見が相次いだ。1万5千年以上前の土器、また土器に付着していた食料の煮炊きを証明する炭化物、さらには石鏃(せきぞく/矢じり)など、世界最古級の遺物が多い。
そうした遺物の展示施設「むーもん館」が今年(2024年)4月26日にオープンした。石器、土器、あるいは発掘調査現場からはぎとった土層などを見ることができる。

観覧料は一般300円(大学生以下無料)。開館時間は9:00~16:00、毎週月曜日休館、祝日の場合はその翌日。
(東津軽郡外ヶ浜町蟹田大平沢辺46-4、☎0174-22-2577)
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