河川は回復傾向、アユ釣りはキャスティングアユルアーもOK〜追良瀬内水面漁業協同組合〜

2024/07/03

追良瀬内水面漁業協同組合

 青森県内には「おいらせ」と名がつく河川が2本ある。1本は国立公園の十和田湖に源を発する「奥入瀬川」、もう1本は世界自然遺産の白神山地に源を発する「追良瀬川」である。
 今回紹介するのは、後者の「追良瀬川」。その流域の大部分は白神山地に含まれ、最下流は日本海を望む深浦町(ふかうらまち)の深浦台地となっている。
 源流は、県境の稜線の真瀬岳(ませだけ)から西方付近で、サカサ沢、ウズライシの沢、五郎三郎の沢などの水を集めて北流し、深浦町追良瀬地区で日本海に注ぐ。流路延長は33.7km(うち河川法に基づく河川指定延長27.9 km)、流域面積117.2㎢の二級河川である。

【追良瀬川の最下流部】

 この川の特徴は、河川勾配は比較的小さいものの、大部分は深い渓谷を流れ、そこには川原がほとんど見られず、谷はV字形を示す急崖になっていること。極めて価値の高い自然生態系を形成していることから「白神山地世界自然遺産地域」、「白神山地森林生態系保護地域」などにも設定されている。
 このため釣り場は限られている。「追良瀬内水面漁業協同組合」(以下追良瀬内水面漁協)事務長の齊藤優さん(56)によると、毎年7月1日のアユ漁解禁後は、最下流部の国道101号に架かる「追良瀬橋」から「上切(かみきり)堰堤」までの約8kmの本支流で釣りはできる。ただし、「追良瀬橋」から河口までと、「オサナメ沢」は全期間禁漁、「上切堰堤」を挟んで上下流ともに50mも禁漁となっている。
 同漁協では今年(2024年)4月下旬、下流部の追良瀬親水公園で、サケの稚魚放流式を行った。漁協や町関係者をはじめ地元の園児や小学生ら約100人が参加して、約5cmに育った稚魚を子どもたちが放流。その子どもたちのために水槽にも稚魚を入れて展示、齊藤さんによると「今の子どもたちは、普段見たことがないので、けっこう興味を持って観察していた」という。
 このサケの稚魚放流も、コロナ禍と一昨年(2022年)夏の豪雨の影響で数年間、中止された。特に、一昨年8月9日からの集中豪雨は、追良瀬川そのものに大きな被害をもたらした。護岸があちこちで崩れ、流木も大量発生して川面を埋め尽くした。川沿いを走る県道も決壊し、流域唯一の集落である松原地区は、一時的に孤立状態になったりした。この豪雨は何もかも記録的な規模で、深浦町では、同年8月の月降水量、1時間降水量、24時間降水量すべてで観測史上最多を記録した。
 筆者は、その豪雨から1年後の昨年(2023年)秋に、追良瀬川を訪ねたが、復旧工事が盛んに行われていて、流木もあちこちの橋の橋脚に引っかかっているなど、まだ悲惨な状況が続いていた。そして今年の春、再び訪ねてみると、まだ復旧工事は一部で行われていたものの、昨年とは格段の差で川はほぼ正常に戻りつつあるように見受けられた。

【2023年秋、復旧工事が盛んに行われていた】
【2024年春、復旧工事が終わり護岸はきれいに整備された】

 追良瀬内水面漁協では今春、サケの稚魚約211万匹を放流した。その数に驚かされるが、理由は同漁協が「深浦町立追良瀬さけ・ます増殖センター」の管理・運営を任されているからで、敷地内には増殖池をはじめとする立派な施設が整っている。
 また、「追良瀬さくらますスモルト幼魚育成施設ふ化管理棟」も併設されていて、サクラマスの増殖にも力を入れている。ちなみにスモルト化とは、斑紋が消え体色が銀色になった幼魚で、その頃に放流すると回帰率が高まるとされている。

【追良瀬内水面漁協の事務所も置かれている「深浦町立追良瀬さけ・ます増殖センター」】

 同組合では今春、サケのほかにアユの稚魚4万匹、ヤマメの稚魚5万匹を放流、10月には10グラムまで育てたサクラマスのスモルト幼魚10万匹も放流する予定だ。

【「追良瀬さくらますスモルト幼魚育成施設ふ化管理棟」で飼育されているヤマメの稚魚】

 追良瀬川は、隣町の鰺ヶ沢町(あじがさわまち)を流れる赤石川と並んで、アユ釣りの名川として知られている。昨年までは、川の状態が良くなかったので、釣り人は少なかったというが、「それでも昨年は型がすごく良かった。体長25,26cmクラスが釣れていた」と斎藤さんは話す。
 今年は、筆者が見た限りでは、十分に釣りが楽しめる状態に戻っていて、釣りができる流域の右岸が、比較的川に入りやすいようだ。「渓相は徐々に戻りつつあります。漁協ではおとりアユを販売しています。友釣りでないキャスティングアユルアーもできますので、お客さんにはどんどん来てほしい」と斎藤さんは期待を寄せている。遊漁券は日券500円、年券5000円。

【渓相は戻りつつあり釣り人も戻ってきている】

周辺の主な観光スポット・施設

【「海の駅 ふかうら 深浦まるごと市場」】

 深浦町は、県内一のマグロ漁獲量を誇るほか、ヒラメやアワビ、サザエといった高級魚介が水揚げされるなど、沖合の漁場は海の幸の宝庫として知られている。その魚介が手に入るのが「深浦まるごと市場」。販売されている商品の中で、やはり目を引くのはヒラメとマグロで、ともに鮮度バツグンで値段もお手ごろ。食堂では、「まるごと海鮮丼」や「海鮮天丼」などが食べられる。
 鮮魚のお買い求めは、品ぞろえがよく、より鮮度がいい午前中がおすすめ。「深浦まるごと市場」が建つ漁港の隣には「夕陽公園」が海辺に広がり、家族連れでも楽しめるよう整備されている。
(西津軽郡深浦町深浦浜町352-1、☎0173-82-0315)

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